おいしいスイーツには「4:2の法則」がある――それって何?仕事をしたら“スイーツ”の味が分かった(後編)(1/5 ページ)

» 2014年08月06日 08時16分 公開
[土肥義則,Business Media 誠]

仕事をしたら“スイーツ”の味が分かった:

 どんな食べ物・飲み物でも5つの基本味(甘味・塩味・酸味・苦味・旨味)として数値化できる機械がある。以前、この連載でも紹介したが、慶應義塾大学とAISSY株式会社が共同で「味覚センサー」を開発(関連記事)。このセンサーを使えば、私たちの舌に代わって、さまざまな味を分析することができるのだ。

 今回分析してもらったのは、セブン-イレブン、ローソン、ファミリーマートで販売しているシュークリームとエクレア※。手軽に買うことができるスイーツの味に、どのような違いがあるのだろうか。聞き手は、Business Media 誠編集部の土肥義則。

※セブンの商品は「ミクルたっぷり とろりんシュー」「とろりんカスタード エクレア」、ローソンの商品は「生クリームで仕立てたプチシュー」「生クリームで仕立てたプチエクレア」、ファミマの商品は「口どけなめらか カスタードシュー」「Wクリーム エクレア」

 →コンビニの「シュークリーム」「エクレア」ってどんな味? 科学的に分析した(前編)

 →本記事、後編


鈴木隆一さんのプロフィール:

 AISSY株式会社代表取締役社長、慶應義塾大学共同研究員(兼務)。慶應義塾大学理工学部卒業、同大大学院理工学研究科修士課程修了。大学在学中よりシステム開発の受託などを行いながらSFC研究所研究員も兼務。大学院修了後、慶応義塾大学から出資を得てAISSY株式会社を設立。味覚や食べ合わせの研究を行い、メディアにも多数出演。通称「味博士」。

 最新著書として、『日本人の味覚は世界一』(廣済堂新書)、他にも『味博士のぜったい太らない食べ方』(日本文芸社)『「味覚力」を鍛えれば病気にならない』(講談社)がある。


シュークリームとエクレアが売れている

土肥: コンビニ各社に聞いたところ、スイーツの中でシュークリームとエクレアってよく売れているそうなんですよ。スイーツコーナーに行くと、たくさんの種類が並んでいるのに、なぜこの2つの商品がよく売れているのでしょうか。味覚センサーの分析結果からその理由が分かったりしますか?

鈴木: スイートといっても「甘い」だけではダメなんですよ。下の図を見ていただけますか。これは、コンビニ3社のシュークリームとエクレアの味を分析したものです。

 シュークリームまたはエクレアを食べた人の多くは「甘いなあ」「おいしいなあ」といった感想を言うと思いますが、実は他の味も含まれているんですよね。例えば、シュークリームにはクリームが含まれているので、旨味の数値が「2」ほどある。ファミマに関しては「2.30」とかなり高い。また、セブンのシュークリームは、酸味が強くて、その数値は「1.87」。

 こうした数値を聞いただけではピンとこないかもしれませんが、要するにシュークリームの隠し味になっているんですよ。もし、甘味が「4」で、他が「1」だったら、甘ったるいモノになってしまう。

土肥: スイーツ全般に言えることかもしれませんが、甘味が強いので、甘さ以外を感じにくいわけですね。

鈴木: スイーツを食べても、甘いだけだと単純な味なので、人は飽きてしまう。飽きさせないために、他の味も含まれていなければいけません。ここで重要なのが、微妙なさじ加減なんですよ。例えば、甘味が「4」で旨味も「4」だと2つの味が強調し合って、もはや「スイーツ」と呼べるモノではないかもしれません。

 これはあくまで仮説なのですが、おいしいスイーツには「4:2の法則」があると思っているんですよ。

土肥: 「4:2の法則」? それは何ですか?

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