「ショップ・イン・ショップ」って何? 日本でタブレットを訴求、サムスン電子が取り入れた手法「GALAXY SHOP」で直販の動きを推進(3/3 ページ)

» 2014年08月04日 16時00分 公開
[岩城俊介,Business Media 誠]
前のページへ 1|2|3       

なぜ、ショップ・イン・ショップか

 自社ブランド商品としてのGALAXY Tab Sは、ショップ・イン・ショップ形態の「GALAXY SHOP」を起点に販促活動を行う。

 メーカーとしても、量販店としても、プッシュ商材を目立つ位置で的確に客へアピールし、販促につなげたい目的が一致する。それがショップ・イン・ショップのメリットだ。

photo ある家電量販店の「GALAXY SHOP」。となりはアップルのショップ・イン・ショップ「Apple Shop」だった
photo GALAXY SHOP独自のデモイベントも定期的に実施する

 家電量販店には“ヘルパー”と呼ぶメーカーの応援販売員が通常の売り場で接客する例もあるが、客からすると店員はあくまで店員。量販店の店員なのか、ヘルパーなのか見分けが付かず、必ずしも自社商品の販売につながらないこともあるようだ。対して自社製品に特化して接客するショップ・イン・ショップならば、店も、メーカーも、客も、その課題を解消できる。

 家電量販店の持つそもそもの集客の仕組み(店舗の知名度や立地、販売スペースなど)やレジ機能などは店舗が持つ既存の機能を間借りできる。実店舗(路面店)を出すまで出店コストをかけずとも、商品のタッチ&トライコーナー、定期的な製品デモや説明会の小イベント、専任スタッフが接客するなど、ブランドが訴求したい独自性も含めた販促が行える。店としても、正しい知識とともに商品を推してくれることで実際の販売数や顧客満足度の向上につながり、場合によって出店料収入も得られる。Win-Winの関係といえる。

 「GALAXY SHOPは、商品をただまとめて展示するだけではなく、実体験していただくコーナーを設け、きちんと商品を理解したトレーニング済みの専任スタッフを用意して展開する。GALAXYシリーズはとにかく、まずは一度使っていただくとよさを実感していただける商品と自信を持っている。そのため、お客様が体験していただける場所を多く作りたいと思った。それがショップ・イン・ショップを作った理由。サムスン初となるキャリアを通さない販売経路を効果的に構築することも課題だった。量販店さんの協力のもと、また互いに効果が出るよう連携したい」(サムスン電子ジャパンの石井専務)

 今回のGALAXY Tab Sは、同社製タブレットの最上位に位置付ける高付加価値モデル。中国メーカーなどを中心にAndroidタブレットは低価格化も進む傾向だが、日本市場においては、価格競争だけにとらわれない製品の機能やメーカーやブランドの技術力、価値そのものをじっくり訴求し、長期的にファンを醸造しなければ続かないという考えが根底にあると石井専務。「ハイエンドのプレミアム商品ということで、お値段は決して安くはないかもしれない。だからこそ、きちんと説明できる場をしっかり設け、“お客様に分かっていただく”ことは重要課題。8月1日時点では56店舗、今後、できるだけ早く3ケタ店舗まで拡充する」(サムスン電子ジャパンの石井専務)

photo 商品を試せるコーナーはもちろん、詳細を聞ける専任スタッフも置く。購入後も使い方相談などもウエルカムという

 プレミアムモデルはいわばブランドの顔。市場成長の傾向から、タブレットもそろそろ、市場全体の34%を占めるとされるアーリーマジョリティ層へ、さらに同じく34%を占めるレイトマジョリティ層まで普及する兆しがある。こういった層への普及は「キャズム(容易には超えられない、普及までの大きな溝)を超えた」などと言われる。スマートフォンはそれを超えたのはご存じと思うが、タブレットはいま、それに立ち向かっている。

 低価格なだけでは将来がない。自身で理解して使い方を考え、応用できる高リテラシーの人(2.5%のイノベーター層、13.5%のアーリーアダプタ層)は別だが、高機能な商品は、新しいものが出るほど難しくなりすぎて……ととらえられ、私にはもう関係ないとか、使ってみたいけど使い方がよく分からないという人も出てくる。そんな多くの方に、技術力の高さや商品の魅力を知っていただくにはどうするか。

 「GALAXYシリーズは一度使っていただくとよさをお伝えできると自信があります。お客様の疑問や質問に答え、実際に機能や特徴をじっくり説明し、例えばこんな使い方もできます。便利ですよねとデモをさせていただくと、なるほどと納得いただけるので、手応えを感じています」(説明員)

 Webサイトの情報ではよく分からないし、知人に聞くのもはばかれる。でも、ここなら気軽に聞ける。そんなアンテナショップになる。そんな雰囲気を作る。日本のスマートデバイスとして、通信事業者の回線モデルが主だった日本ならではのこれまでの事情に対し、いわば原点回帰と言えるブランドの認知施策の1つだろう。グローバルで展開するメーカーの取り組みとして、日本でもすでにそれに取り組んでいたアップルの手法を見習うところは見習うと関係者は述べる。

 「お客さまの相談に乗ったり、購入後も使い方をお聞きいただいたり。GALAXY SHOPも定期的にレクチャーやワークショップのイベントを行うなど、そういう部分も含めてGALAXYファンの交流の場になることを目指す。“お客様に分かっていただき、ファンを育てる”、それは今後の戦略のための重要なミッションと意識している」(サムスン電子ジャパンの石井専務)

前のページへ 1|2|3       

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.