なぜ岡山少女監禁事件で「壁一面に少女アニメポスター」という情報が流れたのか窪田順生の時事日想(2/4 ページ)

» 2014年07月29日 08時00分 公開
[窪田順生,Business Media 誠]

精神鑑定は「科学」ではなく「文学」

 宅間守(大阪教育大学附属池田小学校で児童・教諭を殺傷した。死刑判決が確定し、2004年に刑死した)が精神疾患を「詐病」することに成功したように、意図的にヒアリングでおかしな発言をすればどうとでも診断される。よく言われることだが、精神鑑定というのは「科学」ではなく「文学」なのだ。

 だから、犯罪者の考えを理解するにはその人物が生きてきた歴史、そして環境が重要になる。だから、彼の「部屋」のなかにも少女を「妻」と呼ぶ理由が隠されている、と個人的には思う。

 ただ、その一方で「偏向報道だ!」「在日の事件は報じないのにアニメファンは叩くのか!」みたいに怒るみなさんの気持ちもよく分かる。「犯罪」が起きた時、犯人がどんなアニメが好きだとか、どんなホラー映画が好きだなんだという話は、かなり恣意的に使われるからだ。

情報を供給する側の“事情”

 週刊誌記者になりたてのころ、大分で15歳の少年が隣家で暮らす一家6人を殺傷するという痛ましい事件を取材したことがある。少年は隣家が寝静まるのを見計らって、手袋をはめてサバイバルナイフとハンマーを手にして、風呂場のガラスを割って侵入。「皆殺しだ!」と叫びながら6人を次々と襲った。うち3人はほぼ即死。2人は重症、1人は軽症だった。

 サバイバルナイフで相手を即死させるということは、しっかりと急所に狙いを定めて刺したということだ。一体どういう少年なのか、と取材を進めるうちに、少年の友人たちに話を聞くことができた。そのなかの1人は少年が某人気マンガを愛読しており、その中に登場する刀を武器にするキャラクターの“大ファン”だということと、事件に関係があるのではということを言った。

 「サバイバルナイフで殺してまわったと聞いてすぐに××が思い浮かびました。あいつは××のことが大好きで、刀で切ってまわるふりとかして遊んでいたから……」

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.