もっとも、赤字事業を放置してはよくないし、地元の人々も列車を利用しない。バスやBRTで旅客需要を満たせるなら、鉄道を廃止しても仕方ないとはいえる。しかしここでもう一つ、納得しがたい部分がある。JR九州が運用している「経営安定化基金」について、JR九州は「上場後も鉄道事業安定のために残したい」と考えているようだ。
経営安定化基金とは、国鉄が分割民営化したときに、国から拠出された資金である。経営状態が脆弱(ぜいじゃく)と予想されたJR九州、JR四国、JR北海道に対して拠出された。ゆえにこの基金は「三島基金」とも呼ばれている。JR九州には3877億円が割り当てられた。国鉄が赤字ローカル線を廃止した際に、地元自治体に対して国が交付した「転換交付金」と似た制度だ。第3セクター鉄道は、転換交付金を運用して赤字の補てんに当てていた。しかし低金利で基金を取り崩す状況に陥ったため、第3セクター鉄道の経営はとても厳しい。
ただし、経営安定化基金の場合は高金利の運用が続いている。ここでまた「鉄道建設・運輸施設整備支援機構」が登場する。三島会社は経営安定化基金を「鉄道建設公団」に高利で貸し付け、その金利を受け取って鉄道事業の赤字を補填していた。これも「鉄道建設・運輸施設整備支援機構」に継承された。市中の金利変動にかかわらず、この金利は変わらないという。
この金利負担の原資は何か。「鉄道建設・運輸施設整備支援機構」は独立行政法人だから、国の政策費用として予算化されている。つまり、私たちの税金が使われている。
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