この日の様子も踏まえ、私が過去に小中学校で実施された児童・生徒向けのICT活用アンケート調査に関わった経験から思うのは、
学力の高い児童や生徒ほど、「紙」を好む傾向にあるのではないか?
ということだ。
「紙の方が早い」ということも理由のようだ。また、「紙の方が自分のペースで学習できる」という児童もいた。動画教材の視聴などは、早送りしたいとも言う。タブレット端末のレスポンスが紙並みに早くなれば、また違う結果になるのかもしれない。
授業進行は、およそ20年前、私が高校生の頃と大きく変わらない印象を受けた。現行の学習指導要領と教科書を用いることは変わらないため、現時点でICTの導入が授業を大きく変えることはない。
今後、活用が進む中で新たな面も生まれることを期待するが、やはり、現時点で成果を求めることは難しいように思う。
課題は多く、そのほとんどは整備前に整理すべき事柄だ。
環境構築後のため、教員や生徒などの利用者側のスキルで補うしか術がない部分が多いと思われる。電子黒板の高さを調節するなどの物理環境の改善は可能かもしれないが、予算がなければ動けない。さらなる追加費用を予算計上する場合は、その経緯を明らかにしなければならないだろう。
今回、SEI-Netの授業活用は見られなかった。SEI-Netの稼働後、教員が多忙になったと聞くことが多く、本活用に耐えうるシステムとは思えないそうだ。鳴り物入りで導入し各所でアピールしてきた部分で昨年度から本稼働を始めているシステムだが、その成果が見られなかったことは大きな課題だ。
この2点について、今後実施されるかどうか注目している。
環境整備のための多額の予算=県民(国民)の税負担と、学習者パソコンの購入=保護者の直接負担(各自5万円)で、どのような効果があったのか?
これまでの県側の視点による定性分析ではなく、教員や生徒など、実際の利用者側の視点による定性、あるいは定量分析による客観的評価を行うことが、最大の説明責任だと考えられる。
私自身、初めてのことに踏み出す先進性は評価しているし、1人1台という環境は、授業、および生徒の学びに直結する。今回は、保護者の経済的な面にも影響している。
卒業するときに、「佐賀県の高校に通ってよかった」と、多くの生徒が実感するような取り組みに発展してほしいと願わずにはいられない。(田中康平)
※この記事は、誠ブログの佐賀県「先進的ICT利活用教育推進事業」公開授業から成果と課題を考えてみたより転載、編集しています。
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