なぜ、いま「羽田空港関連の鉄道建設」が盛り上がっているのか杉山淳一の時事日想(4/4 ページ)

» 2014年07月18日 08時00分 公開
[杉山淳一,Business Media 誠]
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東京モノレールの「新橋延伸」を前倒ししたい

 政府が推進する都営浅草線の新線構想については、政府予算案に調査費が計上されている。2013年に1億5000万円、2014年に1億8000万円だ。しかし、開業目標は2020年代半ばとしているため、やはり東京オリンピックには間に合わない。東京都大田区が進める蒲蒲線構想は、まず東急と京急の蒲田を結ぶ区間を2020年までに開業させたい考えだ。東急から京急の線路への乗り入れは東京オリンピック以降となる(参照リンク)。

 それでも、羽田空港は東京オリンピックに向けて発着回数が増加する見込みだ。アクセス路線も需要増に対応する必要はあるだろう。そこで検討したい案がある。東京モノレールの新橋延伸計画の再起動だ。

 現在、東京モノレールは浜松町駅が起点になっているが、実はこれは暫定的な扱いだ。当初の計画では新橋駅が起点だったが、用地買収に難航し、1964年の東京オリンピックに間に合わせるため、やむなく浜松町駅を起点とした。

 2002年にJR東日本が筆頭株主となると、JR東日本は「浜松町駅をJR東日本の線路の東側に移転し、さらに路線を新橋まで延長する」計画を発表した。延伸用地はJRの線路上を活用する。2010年には東京駅延伸も構想されており、費用は総計1000億円以上となるが、延長を新橋までとする場合、費用は東京延伸の1/3程度だ。建設期間も数年で済む。

 これなら、今から着手すれば何とか2020年の東京オリンピックに間に合うのではないか。新橋はゆりかもめが接続し、オリンピック競技場エリアに乗り換え1回で行ける。地下鉄銀座線、上野東京ライン、横須賀線と総武線快速も接続し、浜松町での乗り換えよりずっと便利だ。費用が300億円以上かかるとは言っても、約3000億円の羽田アクセス線の10分の1である。まずはこちらを優先して整備してはどうか。

 ただし、この工事も今すぐに着手できない事情ができた。2013年に浜松町駅西口地区の再開発計画が決まったからだ。老朽化した世界貿易センタービルを建て替える。JR東日本はモノレールを含めて浜松町駅を建て替える構想という。東京モノレールは独自に浜松町駅を線路1本から2本に増やし、列車の発着回数を増やす計画を持っていた。これが再開発計画で白紙になってしまったのだ。

 世界貿易センタービルの建て替えを含めた計画完了は2024年の予定。これでは東京オリンピックに間に合わない。先にモノレールの浜松町駅に着手し、新橋延伸に着手すべきだろう。

photo 建て替えが決まった世界貿易センタービルから新橋方向を望む。新幹線とゆりかもめの間に旧貨物線跡地が見える。ここにモノレールを通せないか

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