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» 2014年07月17日 08時00分 UPDATE

伊吹太歩の時事日想:PC遠隔操作ウイルス事件でも使われた、匿名化ツール「Tor」ってナニ? (1/3)

犯罪の温床になるとして、世界中で注目されている匿名化ツール「Tor」。日本でもPC遠隔操作ウイルス事件で使われたが、結局、このTorとは一体どんなものなのだろうか。

[伊吹太歩,Business Media 誠]

著者プロフィール:伊吹太歩

出版社勤務後、世界のカルチャーから政治、エンタメまで幅広く取材、夕刊紙を中心に週刊誌「週刊現代」「週刊ポスト」「アサヒ芸能」などで活躍するライター。翻訳・編集にも携わる。世界を旅して現地人との親睦を深めた経験から、世界的なニュースで生の声を直接拾いながら読者に伝えることを信条としている。


photo 米ITニュースサイト「ビジネス・インサイダー」で掲載された記事

 先日、米ITニュースサイト「ビジネス・インサイダー」でこんなニュースが報じられた。「テキサス州で、暗号化されたソフトウェアと保護されたコミュニケーションのオープンネットワークを提供する『Tor(トーア)』が、リベンジポルノのWebサイトを掲載していることで訴えられた」という(参照リンク:Anonymity Network Tor Sued For Allegedly Protecting A Revenge Porn Business)。

 横文字が多くて分かりづらいかもしれないが、要するに、誰でも利用できる匿名化サービス「Tor」のネットワーク上でリベンジポルノのコンテンツを提供するサイトがあり、Torの運営側がその掲載を許しているとして訴えられたのだ。

 リベンジポルノは現在、世界で大きな問題になっている。米国ではすでに11州がリベンジポルノを違法にするなど対策が進んでおり、英国でもリベンジポルノを違法にする法整備が議論されている最中だ。日本でも、2013年に東京都三鷹市の女子高生が殺害され、元交際相手だった容疑者がこの女性の裸の写真などをWeb上で公開した「三鷹ストーカー殺人」が起きたのは記憶に新しい。

 さて、記事中に出てきた匿名化サービス「Tor」だが、欧米では「Webのダークな世界」と言われており、Torが絡むニュースもひんぱんに報じられている。世界的に大きな注目を集める一方で、日本でこの名前に触れる機会はあまりない。仮に名前を知っていても、実態を知る人は少ないだろう。このTorとは一体どんなものか。そして世界で注目される理由は何なのか。改めておさらいしていこう。

「PC遠隔操作ウイルス事件」で使用されたTor

 このTorが日本で犯罪に使われた事件がある。2012年に起きた「PC遠隔操作ウイルス事件」だ。事件との関与を否定し続けていた片山祐輔被告が、裁判中に真犯人として逮捕されたことで大きな話題となった。

 この事件では犯行のほとんどが、Tor経由で行われていた。Torが使われた理由は、Web上の動きのすべてを匿名化できる点にある。

 通常、PCをインターネットに接続するとIPアドレス(ネット上の通信を識別するために、機器ごとに与えられる番号)が割り振られる。その状態でWebサイトにアクセスすれば、IPアドレスの履歴が残るため、調べようと思えば、接続に使用した通信サービス事業者や都道府県レベルの住所を特定可能だ。仮にWeb上で殺人予告などを書き込めば、警察などは通信サービスの契約者や通信に使った機器を特定し、犯人に迫れるというわけだ。

 だが、Torは意図的にいくつもの接続先(サーバ)を数珠つなぎに経由させることで、IPアドレスを分からなくし、利用者の匿名性を確保できる。Torはもともと、米国の海軍研究試験所が、軍艦同士のやり取りや位置情報に関するコンピューター上のコミュニケーションを他者が傍受できないようにする目的で開発したソフトウェアだった。正式名称は「The Onion Router」。“タマネギの皮”のように何層にもわたって暗号化を積み重ねられることが名前の由来だ。

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