データが価値を持つ時代に、“タダ”のサービスなど存在しない「日常」の裏に潜むビッグデータ(1)(2/2 ページ)

» 2014年07月14日 08時00分 公開
[野々下裕子,Business Media 誠]
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データが価値を持つ時代に、“タダ”のサービスはなくなる

 何らかのサービスを利用する場合、一般的にはそれに見合う料金を支払うか、会員になるか、といった“代償”が求められる。

 先ほど挙げたコンシェルジュサービスは、無料で使える代わりに、利用者のデータが代償になっているのだ。クレジットカードやプリペイドカードを使うと、ポイントが貯まるサービスがあるが、これも見方を変えれば、カードを使うことで得られるデータに、それだけの価値があるということでもある。

 そのような考え方で身の回りを見回してみると、意外なところでデータが集められ、自分が思っている以上の価値で取引される可能性があることに気付く。今までなら、名前や住所など、個人が特定できなければ情報に価値はないと思われていたが、これからは違う。

 例えば改札の通過履歴。A駅からB駅まで改札を通る時間さえも価値を持つようになってきている。2013年7月に、JR東日本がIC乗車券「Suica」の利用履歴を販売し(参照リンク)、ユーザーがネガティブな反応を示したのは記憶に新しい。むしろ、これからは自分の意識していないところで集められたデータが、身近なサービスに使われるケースが増えてくるだろう。

photo JR東日本がIC乗車券「Suica」の利用履歴を販売し、ユーザーがネガティブな反応を示したのは記憶に新しい

ビッグデータが生活に入り込んでくる

 回転寿司チェーンのスシローでは、すべての皿にICタグを付け、回転レーンに置いた寿司が、どのタイミングでどれだけ食べられ、あるいは廃棄されているかというデータを毎年10億件以上蓄積しているという。

 このデータは、店舗全体のメニュー構成を考える以外に、数分単位でリアルタイム分析した情報から、これからどのネタを追加するか随時指示するために使われている。これも応用次第では、会員情報と位置情報を組み合わせ、各々のユーザーが来店したときに、目の前のレーンに好みのネタが多く回ってくる、というサービスを実現できる可能性を持っている。

 今後、データは身の回りにあるさまざまなセンサーを通じて集められるようになるだろう。メガネや腕時計といったウェアラブルデバイス以外にも、家電やクルマ、家、アクセサリに至るまで、あらゆるモノにセンサーが取り付けられ、ネットワークを通じてデータが収集、分析できるIoT(Internet of Things、モノのインターネット)という構想が現実のものになりつつある。

photo ジェイアイエヌが2014年5月に発表したウェアラブルデバイス「JINS MEME」(ジンズミーム)。メガネをかけるだけでまばたきや視線の移動、体の傾きを検知できるという

 家の外からスマホでエアコンや照明をつけたり、障害物を判断して自動でブレーキをかけてくれる自動車など、生活はより便利になる一方で、日常的に個人の情報が収集され、それがどう使われているかは、意識して調べなければ分からない状況になるかもしれない。

 こうして見ると、ビッグデータは企業のためのビジネスツールであるとともに、身近な生活空間の中に入り込んで利用される方向に動いていることが分かってくる。基本的には、便利で快適な生活のために活用しようとしているのは理解できる一方で、プライバシーの脅威や、トラブルと表裏一体なのではないかという懸念もぬぐえない。

 そこで次回は、ビッグデータを使えば何が分かり、何ができるようになるかについて、現在進められている最新の研究開発事例などを元に検証していく。

ビッグデータ特集、スタート!

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「ビッグデータ? とりあえず大量に集めたデータを生かす、って感じだよな?」

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特集:ビジネスを変えるビッグデータ

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