「地方よりも、むしろ東京が疲弊している」――地域おこしベンチャー「459」の挑戦INSIGHT NOW!(1/3 ページ)

» 2014年07月10日 08時00分 公開
[小槻博文,INSIGHT NOW!]
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著者プロフィール:小槻博文(おつき・ひろふみ)

合同会社VentunicatioN代表。1973年東京都出身。1996年早稲田大学卒業。上場企業からベンチャー企業まで4社にて企業広報に従事した後、その経験を生かして「ソーシャルグッド」を世の中に広めるべく奮闘中。ベンチャー・中小企業やNPO・社会起業家などが広報・PR活動を行う上での仕組み・体制構築/担当者育成を支援する合同会社VentunicatioNを設立し、また「地域活性×広報・PR」をテーマに、徳島県の過疎地域の広報・PR活動にプロボノとして参画中。

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 高齢化や過疎化、歯止めがかからない人口流出をどうにかするため、地域おこし、地方活性化といったキーワードが叫ばれて久しい。こうした課題に向き合うベンチャー企業がある。今回は四国や瀬戸内海の島々の地域おこしに奮闘する地域活性ベンチャー、459の取り組みを紹介しよう。

 代表の真鍋邦大氏は生まれも育ちも高松だが、大学進学をきっかけに上京し、卒業後はそのまま東京に残って外資系金融機関に就職した。新卒当時は地域おこしどころか、地元に戻る気もまったくなかったという。

 転機は2008年だった。当時からメディアでは「地方はダメだ、地方は疲弊している」などと散々言われており、東京にいるころは真鍋氏もそれを疑わなかった。しかし、半年ほど米国に滞在することになり、渡米までの間、東京の家を引き払って1か月ほど実家で過ごすうちに、東京より地方のほうがよほど元気なことに気づく。

 「東京では毎日、通勤で満員電車に詰め込まれ、表情もしかめっ面ばかり。マクロに見れば、確かに地方は疲弊しているかもしれませんが、一人ひとりを見てみれば東京の人たちのほうがよほど疲弊していると思ったのです」(真鍋氏)

 一方、地方の人たちは日常が当たり前になっていて、地元の良さに気付いていない。ならば、都会と田舎の両方を知る自分が地域の良いところを発信することで、地域の人たちがその土地に誇りを持てるようにできないか、と考えたのが始まりだったという。

震災を期に、パラダイムシフトが起こる

photo 459代表の真鍋邦大氏

 とはいえ、それをすぐに行動に移したわけではなかった。予定通り渡米し、帰国してからもしばらく東京で働いていたが、間もなくして東日本大震災が発生した。

 「東日本大震災は太平洋戦争以来の有事といっても過言ではなく、震災を境にパラダイムシフトが起きると直感しました。パラダイムシフトにはさまざまな定義がありますが、私は『優先順位の変更』であると考えており、従来の“貨幣”から“安全・安心”に対する価値観へ、優先順位が変わるに違いないと思ったのです」(真鍋氏)

 価値観が変わったからと言って、すぐに行動に移す人は少ないかもしれない。しかし例えば、子どもが就学するタイミング、定年退職のタイミング、といった人生の節目節目で移住を検討するなど、数年から十数年の単位で見れば、必ず地方志向が高まると真鍋氏は考えた。

 そのような中で課題先進地域とも言われる、自分が生まれ育った四国を舞台に、新しいライフスタイルやビジネススタイルを発信していこうと考え、株式会社459を設立するに至ったという。

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