1974年生まれ、学習院大学文学部卒業。在学中から、テレビ情報番組の制作に携わり、『フライデー』の取材記者として3年間活動。その後、朝日新聞、漫画誌編集長、実話紙編集長などを経て、現在はノンフィクションライターとして週刊誌や月刊誌でルポを発表するかたわらで、報道対策アドバイザーとしても活動している。『14階段――検証 新潟少女9年2カ月監禁事件』(小学館)で第12回小学館ノンフィクション大賞優秀賞を受賞。近著に『死体の経済学』(小学館101新書)、『スピンドクター “モミ消しのプロ”が駆使する「情報操作」の技術』(講談社α文庫)がある。
先月、東京大学東洋文化研究所教授・安冨歩氏が『ドラッカーと論語』(東洋経済新報社)という本を出した。『マネジメント』で知られるピーター・ドラッカーの思想を、孔子の『論語』をサブテキストにして読み解いていく、というもので、私も少しお手伝いをさせていただいている。
そんな関係もあるので、発売前から周囲の人間に、「今度面白い本が出るよ」と話していたのだが、そこでくる反応というのはだいたいこんなものが多い。
「ドラッカーと孔子を結びつけるなんていくらなんでも強引なんじゃないの?」
確かに、かたや紀元前の思想家、かたや20世紀を代表する経営学の祖、この2人を一緒に語ろうというのは無理矢理感があるように思うかもしれない。が、本書を読んでいただければ分かるが、この2人、ビックリするほど同じようなことを言っているのだ。
例えば、『マネジメント』でドラッカーは組織が正しく機能をしていくためには、意思決定に「フィードバック」が含まれていないといけない、と説いている。ここでいう「フィードバック」とは、サイバネティックス理論を唱えたノーバート・ウィナーが示した「フィードバックと学習(learning)」という概念がベースにあるとして、安冨氏はこう定義する。
「いかなる場面においても、自らの過ちを認めて反省し、自分自身のあり方を改めていく」
このような姿勢をドラッカーは「integrity」と表現した。『もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの「マネジメント」を読んだら』にも登場した「真摯(しんし)さ」というやつだ。そんな「フィードバック」を、孔子の『論語』の中にも見つけることができる。
子曰、學而時習之、不亦説乎、有朋自遠方来、不亦楽乎、人不知而不慍、不亦君子乎
先生が言われた。何かを学び、それがある時、自分自身のものになる。よろこばしいことではないか。それはまるで、旧友が、遠方から突然訪ねてきてくれたような、そういう楽しさではないか。そのよろこびを知らない人を見ても、心を波立たせないでいる。それこそが君子ではないか。(訳は『ドラッカーと論語』より引用)
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