クリエイティブディレクター。就活や転職関連のサービスをプロデュースしたり、このような連載をしていたりする関係で、そちら方面のプロフェッショナルと思われがちだが、実は事業そのものやサービス、マーケティング、コミュニケーションの仕組みなどを開発するのが本来の仕事。
直近でプロデュースしたサイトは「CodeIQ」や「MakersHub」。著書に『こんなことは誰でも知っている! 会社のオキテ』、『就職のオキテ』。この連載についても、個人的に書いているブログでサブノート的なエントリーを書く予定。Twitterアカウントは@KatsumiSakata。
つい先日、ある若手ビジネスパーソンがとても深刻な顔をして、話しかけてきました。優秀で仕事もできて、社内どころか社外でも一目置かれている先輩たちが、次々と退職していくというのです。
「自分の末路を見ている感じがして、ちょっと怖いのです。だって、仕事ができて、実績もあって、周囲、とりわけ部下からは慕われている……非の打ち所がないというと大げさですが、ある意味でサラリーマンの理想型のような人たちです。でもそういう人たちが、追いやられるように会社を後にする。やりきれないです」
確かに、中堅以上のビジネスパーソンで、それなりに実績をあげている、いや、一定以上の役職に就いているにもかかわらず離職する人たちの話は、それほど珍しいことではなくなりました。気になったので、実際に当事者たちに話を聞いてみると、意外な共通点が見つかったのです。
そのキーワードは「この会社でやることがなくなってしまった」でした。
実際にやることがなくなってしまった、というわけではありません。自分のやりたいことがなくなってしまった、もしくは、できなくなった、という感じが正解でしょうか。仕事ができて、一定のポジションに就いているにもかかわらず、仕事がままならなくなって辞めていく。今日はそんな話を少し。
ポイントは「偉くなった」ということに尽きるようです。
仕事のできる人の多くは、ビジネスパーソンとしての実力があり、会社が求める以上の成果を出します。出し続けていると、会社としては、要求してそれに応えさせるよりも、自ら考えて行動させるほうがパフォーマンスを発揮することに気がつきます。緩やかな枠組みだけを設定し、それを達成するためなら手段を選ばない、ある意味自由に行動していい、という感じで仕事をさせるのです。
その結果、能力の高い人は、自分のやりたいことをやりたいようにやり、さらに成果を上げて、自分の評価を高めることに成功します。会社としては、そのスタイルで一定のレベルまでドンドン突っ走ってくれることを期待し、手綱を締めることをしません。
当の本人もイケイケドンドンで自由に仕事ができるものですから、さらに伸び伸びと、やりたいように仕事を進めます。結果、出世をして、さらに自由に仕事ができるポジションに就く、はずなのですが……。
もうお分かりですね。一定の役職以上になると、自分のやりたいように、自分のやりたいことをしているだけでは困る、という状態になるのです。文字にして書いてしまうと当たり前のことですが、当事者たちはなかなか気がつかないことも多い。自分はこういうことがしたいわけじゃない、もっとこういうことがやりたいのだと、急激に自由度を失っていく環境の変化についていけなくなるのです。その結果、「私がこの会社でやることはなくなった」という言葉につながってくる。
ただし、それはまったく正解ではなく、正しくは「会社に求められなくなった」なのです。現実を直視するのは厳しい話ですが。
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