仕事で一番偉いのは「最初に案を出す人」教育に生きる人間から、社会を創る皆さんへ

» 2014年07月03日 07時00分 公開
[寺西隆行,Business Media 誠]
誠ブログ

 先日、ハフィントンポストに掲載されていた“「仕事ができるやつ」への最短の道”という記事を読んで、強く共感しました。

 彼は自分の考えてきたキャッチコピーを披露した。だが、議場からは苦笑が聞こえるのみだった。それもそのはず、彼が考えたというキャッチコピーはいかにも稚拙なものであり、どうひいき目に見ても、集客できるようなクオリティではなかったからだ。すかさず議場からは批判の声が上がる。

「問題はキャッチじゃないでしょう、価格ですよ」
「キャッチというのは間違っていないように思うが、このキャッチではねぇ……」
「なぜこのキャッチが300名以上向けなのか、理由が分からないんだが」

 質問、批判が相次ぎ、彼は落ち込んでいるようだった。だが、部門長は言った。

「非常に良い意見だ。私は気付いていなかった。検討事項に加えよう」

 (「仕事ができるやつ」への最短の道 投稿日:2014年6月25日 HUFF POST SOCIETY)

 ブルーカレント・ジャパンの本田哲也社長も、自身のFacebook上で「無数のブレストやってきたけど、これは間違いない」と発言されていました。僕自身、稚拙な案に対して、先に「いまいち」という気持ちが立つ場合も多々あります。だから、この部門長ほど僕自身のふところは大きくないことを恥ずかしく思いました。

 一方で、自身が案を出していないにもかかわらず、部下や若い人が出した案に対し批判から入るようなことはなるべく避けようという心がけだけはしています。

 発案者が一番尊いんです。それは、経験上、強く思います。案を出すのは大変、案を批判するのは凄く簡単。そして人は、偉くなればなるほど、案を出さずに批判する側に流れるものだ、と。

 これまでのビジネスマン生活の中で、幾度となく、会議や意思決定の類は経験してきました。


 「売上げ1億伸ばせ!」(経営陣)
  ↓
 「そのためには夢のある教育サービスだ。考えて!」(管理職陣)
  ↓
 提案(現場)
  ↓
 その提案に対し「夢がない」「どこがもうかるの?」「いつからやるの?」「ほんとにできるかなあ……」(管理職陣)


 こういうパターンが一番進まないし、結果として出るプロダクトも予定調和になってしまいがちです。また、やっかいなことに、こういう場合の管理職陣は

 「提案するのは現場の仕事」
 「管理職は提案を、組織の中で動くように仕組みを考える仕事」

 と言います。そしてこれが、文字面だけ見ると正論なんですね。

 管理職になった今、「提案するのは現場の仕事」だとは思います。僕は、「やりたい!」と言い出すことが多いタイプなので、現場にいるときは「好き」で提案してきました。そして、それが「仕事としても適切だったんだなあ」と思います。

 一方、「提案するのは現場の仕事」という言葉に甘え、管理職は何もアイディアを考えなくても良い、ということにはならないと思います。上記の例の場合、お題は「夢のある教育サービスを(組織で)考えてアウトプットすること」であり、現場が思いつかなければ先に進まないなんてことをしてはいけないわけです。

 僕は、たとえ管理職であっても、キレイなものでなくても発想の原点となるような案を自らいくつも考え、ペーパーに表現するるように努めます。そして、部下を初めとする若い人たちに「案は出してナンボ」という姿勢を見せていきます。心の中で、「僕の案を越えるものを考え付いて欲しい」と思いながら。アイディアを考えるのが「好き」という自分を、「夢のある教育サービスをアウトプットすること」という課題に生かしているのです。

 自分がアイディアを考えるのが苦手なら、先の記事のように、たとえ若い人のアイディアがチープなものであっても、拾って育てる――。そういう管理職の姿はももちろんアリです。そういう管理職はほんとに素晴らしく、輝いて見えます。

 こういう人が「提案するのは現場の仕事」と発するのは良いと思いますが、自分ができなくて、かつ、でてきたものを評論することから入る人が「提案するのは現場の仕事」などと言ってはいけないと思います。

 確かに管理職は「提案が組織の中で生かされるような仕組みを考える仕事」なんですが、それ"も"仕事、であって、提案そのものがなければ、何も生まれないわけです。当たり前に思うことでも、具体的に案として表明したものを尊いと思い、それを起点に前に進め、実行する――。

 幾度となく、案を良いものに昇華させようという雰囲気のチームと仕事を進めてきたことから、これが未来を創る上で、組織上、もっとも大切な姿勢の1つだと思います。(寺西隆行)

※この記事は、誠ブログ発案者が一番尊い。より転載、編集しています。

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