若林氏によると、生体認証市場は国内・海外ともに右肩上がりで成長している。富士経済「2013年セキュリティ関連市場の将来展望」のバイオメトリクス国内市場調査によると、国内では2011年度以降、台数ベースで静脈認証が指紋認証を抜いて最大規模になった。
そうした中で、富士通は非接触型手のひら静脈認証装置を2005年からグローバルに推進している。これまでに累計35万台を出荷し、5000万人を超える利用実績がある。2014年現在、グローバルにおける静脈認証の約8割は、同社の手のひら静脈認証だという。
その用途も、PC(業務端末)でのログオンのほか、ATM(現金自動預け払い機)や入退室管理など、高度なセキュリティを求めるさまざまな社会システムに広がっている。適用分野も、公共施設や金融業種をはじめ、あらゆる業種に、特に採用企業の従業員向け以外に、登録をもとにした一般ユーザー向けにも適用範囲が広がっている。例えば、銀行のATM、図書館における貸し出し業務、病院での患者認証といった事例が身近だろう。
注目したいのは、多くの利用形態でこれまで使用していたICカードが不要になることだ。これは利用者にとって、利便性の向上につながる喜ばしい話である。若林氏も「手軽で信頼性の高い手のひら静脈認証を使用することで、最大の目的であるセキュリティをしっかり担保しながら、実は利便性も向上できる(もっと簡単に使えるようになる)。ここは今後、もっと生かす余地がある」と話す。
そうしたセキュリティと利便性の両面を追求するうえでも、認証センサーの小型化を一層進める必要がある。ちなみに、同社の手のひら静脈認証センサーはこの10年でおよそ35分の1のサイズに小型化し、2014年現在、タブレットに標準装備できるまでになった(法人向けタブレット「ARROWS Tab Q704/PV」)。同氏は「今後さらに用途を広げるため、スマートフォンやウェアラブル端末にも装備できるサイズにしていきたい」と、引き続き小型化を推進する構えだ。
そうなれば、果たしてどんな新しいビジネスモデルが考えられるか。大きな可能性があるような気がする。それを感じさせるのも、手のひら静脈認証の実力だろう。
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