その「贈りもの」、誰のため? もしかして「自分へのごほうび」?博報堂生活総研・吉川昌孝の「常識の変わり目」(1/2 ページ)

» 2014年07月01日 08時00分 公開
[吉川昌孝(博報堂生活総研),Business Media 誠]
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博報堂生活総研・吉川昌孝の「常識の変わり目」

30年以上にわたり生活者を研究し続けてきた「博報堂生活総合研究所(生活総研)」。同研究所の主席研究員である吉川昌孝氏が、さまざまなデータを独自の視点で分析し「常識の変わり目」を可視化していくコラムです。世の中の変化をつかみたいビジネスパーソンに新たなモノの見方を提供します。


著者プロフィール:吉川昌孝

博報堂生活総合研究所主席研究員。1965年愛知県生まれ。慶應義塾大学商学部卒。著書に『亞州未来図2010−4つのシナリオ−』(阪急コミュニケーションズ・共著)、『〜あふれる情報からアイデアを生み出す〜「ものさし」のつくり方』(日本実業出版社)などがある


 そろそろお中元の季節ですね。ところが、お中元・お歳暮のフォーマルギフト市場はここ数年縮小傾向にあるというニュースもよく耳にします。博報堂生活総合研究所が1992年より2年に1回、生活のあらゆる領域を定期的に調査している「生活定点」(参照リンク)の贈りものの項目から、「贈答の常識の変わり目」を見つけました。

photo 「贈答の常識の変わり目」

 「お中元を毎年欠かさず贈っている」の項目は、1998年から徐々に下降。一方、「自分へのごほうびとして何かを買ったことがある」はじわじわ増加しています。そして、2006年から2008年にかけて両者の割合は逆転しました。贈りもの行動の主流は「他人へ」から「自分へ」と変わったのです。

 まず、お中元を贈らなくなった理由として考えられるのが「父の日、母の日の一般化」です。

 Yahoo!JAPANが2014年5月に実施した「お中元意識調査」(参照リンク)によると、贈り先の半数以上が「自分または配偶者の両親」としています。しかし最近は、母の日(5月の第2日曜日)と、父の日(6月の第3日曜日)がしっかり定着してきたため、お中元としてあえてまたプレゼントをしなくても……という意識が広まってきているようです。博報堂生活総合研究所の生活定点調査でも、「父の日を祝った」「母の日を祝った」の数値は微増しています。別の贈答機会と競争が激しくなり、結果としてというわけですね。

 次に、2008年秋に起きたリーマンショック。取引先へのお中元やお歳暮は、これまでビジネスの潤滑油として重宝されてきました。しかしリーマンショック後は、多くの企業が経費を削減せざるを得ず、お中元もお歳暮は「虚礼」とするマイナスの見方が広がりました。これもお中元が劣勢になった理由の一つと考えられます。

 さらに2006年以降は、SNSの普及で知人の誕生日情報を知る機会が増えました。ネット上での人間関係を維持する潤滑油として、20〜40代の人を中心に気軽な贈りものをする例が増えています。季節ごとのフォーマルギフトから、日常的なプチギフトへ。こんな流れもお中元の苦戦を引き起こしていそうです。

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