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» 2014年06月30日 14時00分 UPDATE

「ビッグデータ」の基礎知識(2):今、ビッグデータが注目される3つの理由 (1/2)

ビッグデータという言葉の定義は分かったが、どうしてこんなに注目されているのかイマイチ分からない。その理由をNRIの鈴木氏に解説してもらった。

[池田憲弘,Business Media 誠]

 ビジネスの現場にあふれかえる「ビッグデータ」という言葉。何となくは分かっているけれども、具体的に説明するのは苦労する。そこで「ビッグデータってなに?」「どうやって活用するの?」といった基本を、野村総合研究所 ICT/メディア産業コンサルティング部の鈴木良介氏に解説してもらった。インタビュー前編では、まずビッグデータの定義を聞いた。後編となる本記事では、ビッグデータが注目される理由に迫る。

2014年は「担当者がビッグデータ活用に頭を悩ませる」年

photo 鈴木良介氏の著書、『ビッグデータビジネスの時代』(翔泳社)

池田: ビッグデータがメディアで取り上げられるようになったのは2011年――と鈴木さんは話されました。ただ、わたしの身の回りでは、去年の2013年からいろいろな人がビッグデータと叫び始めたかな、という印象です。なぜ、今ビッグデータが注目されているのでしょうか?

鈴木: 2011年前半時点では、ストレージや、データを処理するためのソフトウェアを提供するITベンダーが、自社製品をアピールするために、ビッグデータに注目していました。そして、秋に経済新聞などでもビッグデータが取り上げられたことで、2012年にユーザー企業(ITベンダー以外という意味)の経営者などへビッグデータという言葉が波及していったのです。

 2013年はビッグデータの“活用”が会社の中期経営計画に盛り込まれた時期です。このころから、社内でビッグデータ活用の担当者が決まったという会社も多いでしょう。そして2014年になって、「ビッグデータを使って、やりたいことは決まった。さて、どう結果を出そうか」という会社が増えてきました。

池田: なるほど。そうして一般的なビジネスキーワードになったんですね。

日本における「ビッグデータ」活用の展開時期
時間 できごと
2011年春 日本テラデータが年頭所感で「Big Data元年」を宣言、外資系ITベンダーを中心に注目を浴びる
2011年秋 経済新聞などで取り上げられ、特集が組まれる
2012年 ユーザー企業に「ビッグデータ」という言葉が浸透、ビジネスへの利用を模索し始める
2013年 会社の中期経営計画に取り入れられる。社内での担当者も決まり始める
2014年 社内の担当者がビッグデータ活用に頭を悩ませている

ビッグデータに注目が集まっているのはなぜ?

鈴木: 今、改めてビッグデータに注目する理由は大きく分けて3つあります。まずは世の中に流れるデータ量が増えたことが一番の要因ですね。ビッグデータという言葉が流行する前から、データの収集や活用に関する提言は数多く行われてきました。1990年代には「高度情報化社会」、2000年ごろには「ユビキタス」という言葉がよく使われていましたが(参照リンク:2002年「情報通信白書」)、概念としてはビッグデータと似たことを昔から言っていたわけです。

 2000年ごろというとあまり記憶にないかもしれませんが、JR東日本のIC乗車券/電子マネー「Suica」が登場したのが2001年。Suicaで買い物ができるようになったのが2004年でした。携帯電話で言えば、FOMA(第3世代携帯電話)が出てきたのが2001年で、位置情報のデータが取れるようになったのもFOMAの時代から。今ではGPSユニットはおもちゃにも搭載されるほど安くなりましたが、あのころはまだ高かった。顧客の位置情報データを集めようとするだけでも10万円、20万円じゃすまなかったので、試そうと思っても簡単にはできなかったわけです。

池田: 今の生活が当たり前になった身としては思い出すのが難しいというか……。Suicaをいつから使い始めたかとか、完全に忘れてました。

photo 今の生活で当たり前に使っているWebサービスの大半は2000年代に生まれたものだ

鈴木: 2000年代に入ってから、急速にWebサービスが成熟し始めました。GoogleのGmailも、開始当初は容量1Gバイトも無料で使えるのが画期的だと注目を集めましたよね。そして、2010年にかけてWikipedia、YouTube、Twitter、Facebookと今では当たり前となったメジャーなWebサービスが次々と誕生しました。SNSでの書き込みや、設定した個人情報も事業者側からすれば、貴重なデータとなります。

 スマートフォンの普及もデータ量が爆発的に増加した要因ですね。普及のきっかけとなったiPhoneが米国で登場したのは2007年でしたが、これまでの携帯電話(フィーチャーフォン、ガラケーなどと呼ばれる)との大きな違いは、アプリの数が大きく増えたことです。これはビジネス面で大きなインパクトがありました。例えばスーパーが販促をしようと思ったら、200万円程度で作った専用のアプリを無料で配って、ユーザーにセール情報を送ればいい。コストが低くなったのです。

池田: 企業側からすれば、うれしい話ですよね。その分、競合も増えたとは思いますが。

鈴木: 今では多くの人がスマホを使っており、高速の通信環境も整いつつありますが、見方を変えると「消費者自身が社会全体の通信インフラに投資してきた」とも言えるわけです。行政や事業者がやらずとも、消費者が自ら超高性能な通信デバイスを購入してくれて、月々の通信費も自分で払ってくれるわけですから。

 ユビキタス構想などが仮に正しかったとしても、それを実現するために国や1つの企業が10兆円も100兆円も投資をするのは現実的ではありません。しかし消費者が「これは便利だ」とスマホを買ったことで、強力な通信インフラができあがったわけです。日本では、10年ぐらいかけて100兆円規模のお金が動いたとも言われています。これにより、データを安価に取得できる環境が実現しました。

池田: 確かに消費者が払う通信費などで、通信事業者は通信網を整えてきたわけですよね。しかし一消費者としては、その動き全体を“投資”と捉える発想はなかったです。

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