“農協改革”の攻防から学ぶ、組織変革を成功させるカギINSIGHT NOW!(2/2 ページ)

» 2014年06月19日 07時00分 公開
[日沖博道,INSIGHT NOW!]
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反発の矛先をそらす、「見せ球」のテクニック

photo 組織変革をしようとするときには、反対派の不満を逸らすための、いわゆる“見せ球”のテクニックが有効だ

 私も過去に、社内の構造改革を支援するコンサルタントチームの責任者として、似たような手を何回か使ったことがある。いずれの場合も、社長が社内における権力基盤が十分に持っていなかったことによる“苦肉の策”だった。

 改革案だけを持ち出しても、反対派からいろいろな難癖をつけられて“値切られる”可能性が高かったため、見せ球として大胆な組織変更を持ち出したのだ。案の定、反対派の関心は、自分たちの本丸である組織を守ることに集中し、それ以外の実質的な改革内容には、あっさりと条件つき同意に応じてくれた。

 こうした見せ球作戦のメリットは、意外と簡単に“条件闘争”に持ち込める点だ。どっちつかずの態度をとる多くの人は「お手並み拝見」とばかりに様子見を決め込む。なので、改革賛成派が早く動いて実績を上げていけば、改革賛成のムードは一気に広がる。

 しかし、こうした手口はそう何度も使えない。そのうち反対派も「ああ、この部分は見せ球だな」と学習するので、逆にこちらが狼少年になってしまう。その間に改革の実績が上がっていないと、逆に様子見派の信頼を獲得できずに離反されるリスクが高まるのだ。

 つまり、改革を仕掛ける政権側は、すでに獲得した改革テーマ(農協改革に限らない)で早急に結果を出し、次の改革を行う推進力につなげる必要があるのだ。さもないと、政権はだんだんと求心力を失い、足元を見る反対派から、いろいろな場面で“値切り交渉”的な条件闘争を強いられる。そうなれば改革案はいずれ、日々の改善活動といったような、まるで効果の上がらない施策になりかねない。


 安倍政権はこのあと年末に向けて、具体案を固める過程でさらに後退を強いられるか、踏みとどまって巻き返しを図るのか見ものである。また、その他の成長戦略で、アベノミクス景気を持続させる成果を上げられるかが、この農業・農協改革を左右することは、先に述べた通りだ。

 TPPによる大嵐がやってくる前に、農協改革を着実に進めておくことは、ニッポン農業の生き残りと再生にとって重要なポイントだ。しかし、これは同時に「外から仕掛ける」組織改革の見本とも言える。(日沖博道)

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