なぜこんなに高いの? 化粧品の原価と売価の関係数字のオモテとウラを学ぶコラム(4/4 ページ)

» 2014年06月17日 08時00分 公開
[眞山徳人,Business Media 誠]
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通販専門メーカー「ファンケル」の場合

 ファンケルの場合は資生堂よりも極端で、原価100に対して、実際の売値は何と301です。

2013年3月期有価証券報告書(単体)のデータを基に作成

 通販型のビジネスは、コストを抑えて低価格――という形がよく見られます。その最たる例が「自動車保険」。しかし、実は通販型化粧品というのは店頭で消費者が手に取ることができないので、商品を売り込むためにはひたすら広告宣伝をするしかありません。そういう意味では、意外とコストのかかる業態だったりします(自動車保険はどのみち目に見えない商品を扱っていますから、こういった事情が生じにくいのです)。

 その証拠に、広告宣伝のコストは原価とほとんど同じ「101」かかっています。人件費がかさんでいるのも、販売を行うために直接営業マンが活躍する場面が多いからだと思われます。その一方で、ファンケルは営業利益を10残している。これは両社が取りそろえているアイテムの違いによるものです。

 資生堂は化粧品以外にも、シャンプーなどの商品を販売しています。シャンプーは類似品が多く非常に競争が激しいため、常にギリギリの価格で売らなければいけません。その点、資生堂は企業規模を生かして低価格で勝負をしても「3」の営業利益をしっかり残すことができるわけです。

 一方のファンケルは、化粧品以外の商品として「健康関連商品」を扱っています。金芽米やマルチビタミンなどのサプリメントが該当します。金芽米は普通の白米と栄養価が大きく異なり、健康によいとされているので、類似品のお米と競争することがあまりありません。むしろその栄養価をしっかり伝えて、ちゃんとした値段をつけて買ってもらうという形で、高めの利益を得ることができます。

 もちろん、どのような商品もやがては後発品や類似品があふれてきますので、ファンケルは次々と新たな商品を世に出してその優位性を保ちながら、少しずつ企業規模を拡大して価格競争力をつける、といった地道な活動をこれからもしていくことになるでしょう。


 いかがだったでしょうか。化粧品以外にも、世の中には不思議な値付けをされているアイテムがたくさんあります。「高すぎるかも……」と思ったときには、今回紹介したバリューチェーンや、それに伴って生じる費用のことを、ぜひ思い出していただければと思います。

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