欧州でも“日本型デフレ”が起こる理由藤田正美の時事日想(2/2 ページ)

» 2014年06月11日 07時00分 公開
[藤田正美,Business Media 誠]
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需給ギャップの調整なしにデフレは解消しない

 しかし、こういった救済は、結局のところ時間稼ぎにしかならないケースが多い。まさに日本がそうだった。バブルが弾けた後、政府も銀行も、病んだ企業を切開して“うみ”を出すという選択をせず、時間をかければ経済が復活して何とかなると考えていた。

 実際はその選択が日本経済を蝕み、生産年齢人口の減少と相まって、デフレへと突き進んだのである。需要の減少に対して、供給の調整(企業の倒産や再編成)を先延ばしにしたためだ。

 今、同じことが欧州で起ころうとしている。リーマンショックという衝撃でバブルが弾け、その後遺症として国家債務危機が発生した。金融の超緩和で乗り切ったかに見えても、問題はゾンビ企業やゾンビ銀行(財政的に死に体の企業や銀行)が生き残っていることだ。こうした企業や銀行を整理して供給力を調整しなければ、人口が減る社会では需給のギャップが膨らみ、デフレへの圧力が強まることになる。

 しかし、いくら死に体であったとしても、企業や銀行を潰すという決定は、政治的には難しい。EUとしてそれぞれの主権国家に指令を下すのは、なおさら難しいのだ。欧州議会で「統合懐疑派」が勢力を伸ばした背景には、こうした厳しい決断を迫られる中で、ナショナリズム的な感情が強まった結果という見方もできる。

 需給のギャップを急速に解消できなければ、結局のところ、金融の超緩和を続けるほかない。ドラギ総裁が打ち出したマイナス金利の導入は、国家債務危機のときと同様に、効果を上げるかもしれない。しかし、ユーロ危機の根源が、加盟国の競争力を調整する機能が失われたことにあるとすれば、いつまでも“マリオ・パワー”で乗り切ることもできないだろう。そのときに世界経済の進路は大きく変わるかもしれない。

photo 欧州議会では、経済への不安がユーロ圏統合への懐疑的かつ悲観的な見方を助長しているといえる

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