そもそも、ビッグデータって何なの?「ビッグデータ」の基礎知識(1)(1/2 ページ)

» 2014年06月09日 11時30分 公開
[池田憲弘,Business Media 誠]
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 「これからはビッグデータの時代だよね」と言う人がいるが、いまいちピンと来ない。確かに世の中のビジネスにはビッグデータという言葉が溢れている。コンビニのローソンは「Ponta(ポンタ)カード」から得られるデータを生かして、マーケティングに使っているようだし、JR東日本も「Suica」の利用データを集めているという。最近は「ビッグデータを活用する」という方針を出している会社も多い。

 「ビッグデータって、要するに膨大なデータを解析して、ビジネスに活用するんだよね?」と、イメージとしては、なんとなく分かっている(と思いたい)が、「ビッグデータはなぜ役に立つのか」「というかビッグって何さ?」などと聞かれたら困る。うまく説明できる自信がない。

 というのも、ビッグデータという概念自体が、とても“あいまい”なものだからだ。総務省が出した2012年度版「情報通信白書」でも、ビッグデータを「事業に役立つ知見を導出するためのデータ」と説明している(参照リンク)が、指し示す対象が広すぎて、よく分からない。

 ビッグデータとはそもそも何か。なぜ、ビッグデータという言葉はこうも分かりにくいのか。『ビッグデータビジネスの時代』(翔泳社)など、ビッグデータ関連の書籍を執筆している、野村総合研究所 ICT/メディア産業コンサルティング部の鈴木良介氏に解説してもらおう。前後編の全2回でお送りする。

ビッグデータの定義が存在しないワケ

photo 野村総合研究所 ICT/メディア産業コンサルティング部の鈴木良介氏

池田: 「ビッグデータ」という言葉が一般的なビジネス用語になりつつあります。ただ、この概念がどうもよく分かりません。ビッグデータを活用しています、と公言する企業も多い一方で、データのサイズも形も、生かし方もみんなバラバラ。結局「ビッグデータ」って一体何なのでしょうか。

鈴木: 確かに「ビッグデータ」は説明が難しい言葉ですね。“ビッグ”とはどれくらいの大きさなのか、といった議論も多くありました。私は「事業に役立つ知見を導出するためのデータ」としていますが(総務省の説明もこれを用いている)、解釈が分かれないようなはっきりとした定義はないんですよね。というか、定義できない。

池田: 定義ができない?

鈴木: 少し話はそれますが、言葉が定義されるのは、定義する必要性があるからなんですよ。一昔前、ビッグデータと同様に「クラウド」という言葉も、IT業界のトレンドワードとして広まりましたが、こちらは米国の国立標準技術研究所(NIST)が明確な定義を出しました(参照リンク)。この2つの違いは分かりますか?

池田: うーん、分かりません。

鈴木: 「調達」する対象になるか、というのが違いの1つです。IaaSやSaaSをはじめとしたクラウドサービスは調達対象となりますので、仕様を指定できなければなりません。しかし、データ単体を調達対象とすることは、ソーシャルメディアデータなどの一部の例外を除けばまだ一般的ではありません。また、データというものは解釈して活用しなければ意味がありませんが、解釈の方法は業務業種によってさまざまなので明確な定義は困難でしょう。

池田: だから、明確な定義をする必要性が薄いと。

鈴木: また、ビッグデータに注目するプレイヤーが変わったことも大きな要因ですね。2012年の前半くらいまでは“ビッグ”という言葉が、どれくらいのデータサイズを指すのか、という点に関心を持つ人も多かったですが、今はむしろ「活用によってどういう効用が期待できるのか?」という点に関心を持つ人が増えているように思います。

 ビッグデータという言葉が流行り始めた当初は、ストレージや、データを処理するためのソフトウェアを提供するITベンダーがビッグデータに注目していましたが、彼らにとって大事なのは、「ウチの会社の製品なら、ビッグデータを処理できる!」とアピールすることですから。自然とデータサイズや処理速度に注目が集まったわけです。

 しかし、今ビッグデータに最も注目しているのは企業の経営者です。彼らにとってビッグデータとは、「それを使って、もうかるかどうか」ということが一番大事。こう言ってしまうと元も子もないのですが、経営者にとっては、もうかりさえすればデータの大きさなんてどうだっていいんですよ。ビジネスに役立つ何かが見つかればOKというわけです。

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