これはある企業の管理職から相談されたエピソード。1人だけではなく、複数から似たような話を聞いたので、問題が表面化する直前まで来ている現象なのかもしれません。「勉強会や社内セミナーという名目を隠れ蓑にして、企業のナレッジを吸い出している人たちが現れ始めた」というのです。
似たようなケースに「講演」がありますが、これは社名を名乗ってスピーカーとして参加する場合、企業の広報などの確認が入ることが一般的ですし、上長の許可も必要です。しかしこういう、いわゆる晴れがましい場所に出られる人はごく一部。ほとんどの人にお声がかかることはまずありません。
しかし「内輪の勉強会に来て、ちょっとしゃべってください」という依頼だったらどうでしょう? ベンチャー企業の社内勉強会で、業界の事情などを話してくださいという依頼ならば、その行動を言わないでおけば、社内のチェックは必要ありませんし、上司にうるさく詮索されることもない。業務時間外なら自由に行動していいはず(もちろん、そんなことはありません)という思い込みのもと、依頼を受けて、会社や業務のことをペラペラと話してしまう。
企業にとってはとても危険なことですが、話す当人にとっては快感です。人前に立ち、マイクを持って、知見を披露する行為と、それにともなう薄謝によって、承認欲求が満たされるのです。
以前の連載で、世代によって働くことについての考え方が違ってきているという話を書きました(参考記事)。今回の話はそれに通じるところがあるようです。企業に属していて、組織の一員として、さらに業務として、仕事をしているのだけれども、それは自分の手がけた仕事であり、自分の手柄であると。一定の年代以上の人には、なかなか理解できない感覚です。
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