ところで、国会議事堂の天皇陛下の控えの間のとなりは、ずっと自民党の控え室である。自民党は野党に下っても、この部屋を他党に譲らなかった。天皇制に異を唱える政党が天皇陛下の隣室を使うことをよしとしない。これはおそらく国会運営の暗黙の了承事項と思われる。現在の象徴天皇制に賛成する考えが多数だろう。しかし、日本は思想の自由が認められている。天皇制に反対する人もいる。
そんな状況でも、天皇陛下の行幸啓は官報に記載され、お召し列車が走り、鉄道ファンは歓喜する。
「天皇陛下が鉄道を使っておでかけになる」「列車の旅を楽しまれる」。これは、ご利用になられた鉄道会社だけではなく、鉄道業界にとって誇らしいことだ。そして私たちは、こんな事象から日本国内の平和を確認できる。暗い悲しいニュースも多い中、お召し列車は平和のシンボルだ。「お召し列車が趣味の対象」となる社会を、私たちは不断の努力で維持していきたい。
誠Styleの連載「杉山淳一の +R Style」が単行本になりました! 『ぼくは乗り鉄、おでかけ日和。 日本全国列車旅、達人のとっておき33選』(幻冬舎)。誠 Styleに掲載した全60本の記事の中から、33本を厳選。大幅に加筆・修正を加えて再構成したものです。
日々の生活に+Railwayするだけで、毎日がぐっと楽しくなる――そんな連載のコンセプトが丸ごと楽しめる1冊です。Webで連載を読んだ人も、これから読む人もぜひ本書を手に取ってみてください。
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