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» 2014年05月23日 08時00分 UPDATE

杉山淳一の時事日想:「お召し列車」の運行告知は、日本の平和を知らせている (1/4)

日本人にとって天皇陛下は特別な存在だ。それは日本の鉄道ファンにとっても同じ。天皇陛下がお出かけになるときには「お召し列車」を走らせてくれる。我が国で最も重要な人物の行程が世間に告知される。これこそ平和の証。世界に誇れる日本のよさである。

[杉山淳一,Business Media 誠]

杉山淳一(すぎやま・じゅんいち)

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1967年東京都生まれ。信州大学経済学部卒。1989年アスキー入社、パソコン雑誌・ゲーム雑誌の広告営業を担当。1996年にフリーライターとなる。PCゲーム、PCのカタログ、フリーソフトウェア、鉄道趣味、ファストフード分野で活動中。信州大学大学院工学系研究科博士前期課程修了。2008年より工学院大学情報学部情報デザイン学科非常勤講師。著書として『知れば知るほど面白い鉄道雑学157』『A列車で行こう9 公式ガイドブック』、『ぼくは乗り鉄、おでかけ日和。 日本全国列車旅、達人のとっておき33選』など。公式サイト「OFFICE THREE TREES」ブログ:「すぎやまの日々」「汽車旅のしおり」、Twitterアカウント:@Skywave_JP



 2014年5月12日、私のFacebookのニュースフィードにこんな情報が掲載された。「天皇・皇后両陛下がトロッコ列車で新緑を楽しまれます」というタイトル。発信元はわたらせ渓谷鐵道の公式Facebookページだ。その本文が興味深かった。

天皇・皇后両陛下は5月22日(木)の午後、通洞駅から水沼駅までわたらせ渓谷鐵道のトロッコわっしー号にご乗車されます。


 天皇陛下が乗られる列車は「お召し列車」と呼ばれている。お召し列車は、国内最高の警備体制で運行される。鉄道会社も最高の便宜を図る。例えば「他の列車と並んではいけない」「立体交差の下側を通過するときは、同時に上側を他の列車が走ってはならない」「お召し列車を他の列車が追い越してはいけない」などと言われている。戦前はもっと厳しかっただろう。お召し列車がいつ走るか、どのルートを走るかは最高機密で、担当する鉄道職員や出迎えなど、直接関係者以外には当日まで知らされなかったはずだ。

 わたらせ渓谷鐵道の告知はお召し列車運行の10日前である。日付だけではなく「午後」と時間帯も絞っている。さらに乗車区間や乗車する車両まで明記されていた。いままで、鉄道会社が事前にここまで情報公開した例はなかったと思う。インターネットによって当事者がWebサイトなどで情報を公開でき、SNSなどを活用できる時代ならではのエピソードだ。報道発表の形を取れば、新聞や雑誌は情報の悪用を恐れて、内容を少し「自粛」したかもしれない。

photo わたらせ渓谷鉄道のFacebook投稿

 わたらせ渓谷鐵道はプレスリリースも発行し、Webサイトでも情報を公開している。掲載日から一週間ほど経過したが、執筆時点(2014年5月22日)もそのまま掲載されていた。これは、日本がいかに平和な国であるかを示す好例だ。もちろんその平穏を維持するために万全な警備体制がある。

 海外に目を向ければ、政府要人の列車や線路に対する不穏な事件も散見される。要人の列車を秘密裏に運行する国もある。それに比べると、日本は「お召し列車」を鉄道趣味の対象にできる。沿線では大勢の人が国旗を振って歓迎する。これを平和と呼ばずにはいられない。日本が世界に誇れる慣習であろう。

photo わたらせ渓谷鉄道のプレスリリース
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