自分の才能に出会う「旅」――日本GEトップに聞く、グローバル企業で働く醍醐味企業家に聞く【安渕聖司氏】後編(3/4 ページ)

» 2014年05月21日 08時00分 公開
[まつもとあつし,Business Media 誠]
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人と事業の流動が組織を強くする

photo GEにおける人事評価のマトリクス。業績とともにリーダーシップ資質「グロースバリュー」も評価の対象となる

――GEには、人が海外に出やすい仕組みはあるのでしょうか?

安渕: 海外に出る“機会”という点では、GEは社内の空きポジションを検索して応募できる制度を用意しています。日本で働いていても、例えば米国にエネルギー関連の仕事があるかなど、いつでも探すことができる。2年以上勤務していれば、上司の承認がなくても応募が可能です。ですから、上司は優秀な部下が次にどんなことをしたいのか把握しておかないと、ある日突然いなくなって困る、ということになりかねません(笑)。

――上司からすれば気を抜けませんね。

安渕: 人事評価のマトリクスも頭に置き、当人ともコミュニケーションを取りながら、しっかり人員計画を立てておくことが重要になってきます。業績に直結する問題ですから。

 1つのグループ会社、1つの事業部門だけを考えれば、ある意味面倒な仕組みですが、優秀な人には道を開いてあげた方が、結果的にグループ全体の活性化が図られ、成長を続けることができる。人材の流動が避けられなくなる仕組みが整えられているのです。優秀な人材を輩出する部門は、「あそこなら自分はもっと成長できる」と評価されることにもつながります。結果としてリーダーやその部門自体の評価も上がり、逆に優秀な人材が集まってくるわけです。

 GEでは、書類のフォーマットや使用する用語を全世界で統一しています。別グループの人間とコミュニケーションを取るにもスムーズですし、別の組織に移ってもすぐ仕事に取り組める。そういった仕組みもこの制度を支えています。

――人材だけでなく、組織や事業そのものも常に変化させていることに改めて気づかされました。創業事業である電機も例外ではなく、収益があっても売却し、次世代の事業開拓のための原資とすることもあると。

安渕: 事業のポートフォリオをどう見直すか、それに対するスピードと実行力はGEの大きな強みだと思います。GEは何か特定の事業をやるための会社ではないのです。時代に応じて、自分たちが一番うまく経営できるビジネスは何か、という観点から事業を組み替えてきました。

 例えば、1985年に買収した米国のテレビ事業(RCA)ですが、1987年にすぐ売却しました。これは、日本勢がすぐに追いついてくる、ここで勝負しても意味がないと決断したためです。

――現在、日本企業がテレビ分野において韓国勢に対して苦戦しつつも、この市場にこだわっていることを考えると対照的ですね。

安渕: ワンカンパニー、ワンカルチャーという基本的な考え方があればこそですね。特定の事業部の利益にこだわったり、事業部ごとに文化が違ったりといった事態をなるべく排除してきたことが功を奏していると思います。

 GE全体の5〜10年先を考えたら、この事業は価値が高いうちに外に出し、自分たちよりもうまく回せる人たちに任せて、自分たちは得意なこと、未来につながることに注力していこうと。「次に何をすべきか」を常に変化させてきたので、そこにためらいがない。もちろん事業売却だけでなく、R&Dへの投資も重視しています。売却はその原資でもあるのです。

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