日立の人なら誰でも知ってる「ケンロン」って何?始まりは昭和34年(2/3 ページ)

» 2014年05月20日 18時00分 公開
[吉岡綾乃,Business Media 誠]

卒論・修論とどこが違うのか

 新卒社員は、大学卒であれば卒業論文、大学院卒であれば修士論文や博士論文を書いてから入社してくる。大学で書く論文と、研修員論文はどこが違うのだろうか。また、入社2年目とはいえ業務をこなしながら論文を準備するのは大変なはずだ。ちょうど今年の2月末に研論発表会を終えたばかりの鍋島裕司さんに、どのように準備してきたのか聞いてみた。

今年研論を終えたばかりの鍋島裕司さん(右)と、鍋島さんの指導員の飯田敏成さん(左)。2人とも日立製作所情報・通信システム社ITプラットフォーム事業本部開発統括本部ソフトウェア開発本部DB設計部に所属

 「発表の1年前くらい、入社1年目の3月頃に人事から『これから研論が始まるからね』と通知があり、ここから準備が始まります。本格的にスタートするのは9〜10月ごろ。まずテーマを決めるところからです。どういう内容の論文にするか、指導員の先輩と相談して決め、内容が決まったら総務に提出します。12月には課内で1回中間発表があります。

 年が明けると、1月中に論文を提出して、2月の発表の準備に入ります。1月は何回も中間発表があります。大きなものだけでも、課内で2回、部長の前で2回。小さな発表はもっといっぱいやりました。

 発表会前日は1人で(プレゼンテーションの)練習をしていたのですが、途中で部長が『これから見るから!』と入ってきたのでびっくりしました。そこから部長と一緒に数時間練習です。徹夜はしていないですが、夜遅くまで練習しました」

 研論で取り上げるテーマは自分の業務に関することなので、その内容は人によってさまざまだ。鍋島さんの場合はデータベースのデータ転送についてだったが、例えば人事や営業担当の社員であれば、人事や営業についての研論を書くことになる。

 鍋島さんの場合は入社前、大学で卒論、大学院で修論を書いている。大学で書く論文と、研修員論文とはどこが違うのだろうか。「まず、普段の業務を行いながら準備をするのが大変です。もう一つは『承認を取る難しさ』。大学の論文を見てくれるのは基本的に教授ですが、研論は社内で何段階も承認を取る必要があるんです。自分が書いたものを指導員に見てもらい、指導上長に見てもらい、さらに課長、部長クラスにも見てもらってそれぞれ承認を取らなくてはなりません」

 この承認作業は論文を書き終えた後だけでなく、論文の方向性を決める、目次案を決める、本文を書く……など、論文執筆の各段階で毎回発生する。自分が決めたことについて、上長の確認をとったら次に進める、それを踏まえて自分が行った作業にまた上長の承認を取る……という“仕事の進め方の基本”を、論文書きのプロセスでたたき込まれるのだ。研論は書いた本人のものであるだけでなく、部としてのものでもあり、研論や発表のできで「その部がどう若手を育成したか」を問われる。そのために、指導員以上の上長もみな研論には真剣に取り組むという。

 「自分がやってみて初めて、思っていた以上に、職場全体が研修員論文というものに『アツイ』ということを感じました。研論については、周りの人たちがみなものすごく協力的で、忙しいときに業務を手伝ってくれるというのもそうですし、いろいろな人がいろいろなアドバイスをくれます。『研論のために知りたいことがあるんです』といえば、よその部署の人でも快く会ってくれますし。それまで、会社が社員を教育してくれる、というのがどういうことなのか分かっていなかったのですが、ああ、こういうことなんだな、と分かりました」(鍋島さん)

 鍋島さんの研論準備は比較的順調な方だったそうなので、同期で大変だった人の話を聞いてみた。「論文提出の締め切りに遅れた人は、論文を書くのと発表の練習を同時に進めなくてはいけないので苦労していました。仕事が忙しくて(研論の準備をする)時間がとれず、大変だと言っていた同期もいましたね。あとは上長が忙しすぎて『承認が取れない』と悩んでいた人。承認が取れないとそこで準備が止まってしまうので……。本人や上長がインフルエンザで出社停止になってしまい準備が大幅に遅れた、などという話も聞いて『ああ、仕事にはリスクを織り込んで余裕のあるスケジュールで進めなくてはいけないんだな』と改めて学びました(苦笑)」

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