KADOKAWAとドワンゴが「KADOKAWA・DWANGO」に――経営統合の狙いは?3年前から打診していた(2/2 ページ)

» 2014年05月15日 07時00分 公開
[池田憲弘,Business Media 誠]
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コンテンツとプラットフォーム、両方を提供するベストな形に

photo ドワンゴ代表取締役会長の川上量生氏。「こういう発表ができて、僕自身も興奮して、ワクワクしております」と喜びを示した

 今回の経営統合について、ドワンゴの川上会長はどう見ているのか。「豊富なコンテンツを持つKADOKAWAと、Web上のプラットフォームを持つドワンゴが協力した、と考えている人も多いと思うが、その理解は違うと思っている」と川上氏は話す。

 「KADOKAWAが持つ、雑誌や本というメディアは、コンテンツであると同時にリアル世界でのプラットフォームでもある。ネット企業ではプラットフォームだけを提供する企業が多いなか、ドワンゴはニコニコ超会議(幕張メッセで行っているイベント)など新しいコンテンツを作ろうとしてきた。コンテンツとプラットフォームを、それぞれリアルとネットで提供してきた会社が1つになるのは、非常に相性がいいのではないか」(川上氏)

 さらに、コンテンツとプラットフォームの両方を提供できることが、これからの大きな強みになると川上氏は強調した。「かつて、PCだけを提供して大きな利益を得たPCメーカーは苦戦し、OSとハードウェアの両方を提供してきたアップルが有利になった。専業が有利かどうかは、環境によって変わる。ゲームの世界で、日本で唯一と言ってもいい成功を収めた任天堂も、ゲームソフトとハードウェアの両方を垂直統合型で提供してきた。常に競争の軸を変え、他社との競争を避けて新しい世界を切り開く――コンテンツとプラットフォーム、どちらも自社で提供することで新しい価値を生み出せるはずだ」(川上氏)

 KADOKAWAと統合したことで、他社からコンテンツが提供されづらくなるのでは、という質問に対しては「そういう事態はないと思っている。プラットフォームの競争はグローバルになっているので、この統合はちっぽけなもの。それ以上に、より信頼される企業になるメリットの方が大きい」(川上氏)と回答。「統合後もKADOKAWAはYouTubeにコンテンツを提供するだろうし、われわれもKADOKAWA以外のコンテンツを展開する。囲い込むという話ではなく、オープンな統合だ」とアピールした。

角川の“後継者”は川上氏?

photo KADOKAWA取締役会長の角川歴彦氏。記者会見では、川上氏を「天才」とするなど期待をアピールしていた

 「ようやく私は、川上君という若い経営者を手にした」

 角川氏は感慨深げにこう語り、川上氏へ大きな期待を寄せた。「新しい仕事をしたいという気持ちも大事にしてほしい。ただ、うちも社員が3000人を超える大世帯になる。所帯の大きさを感じ、行き先を示す経営者になってくれると信じている」(角川氏)

 リアルとWebのプラットフォームと融合し、新たなステージを目指すKADOKAWA・DWANGO。それは同時に出版・メディア業界の世代交代を意味するかもしれない。「KADOKAWAは出版社からデジタル・ネット企業に変わりたいと努力してきた。21世紀型のメディア、そしてYouTubeにも対抗できる日の丸プラットフォームを作ろう」(角川氏)――果たして、世界に通用する“オールジャパン”プラットフォームを作れるか。今後の動きから目が離せない。

photo 日本企業で作り上げた“オールジャパンプラットフォーム”で世界を舞台に戦うことが目標だという
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