中国はどこまでベトナムと争うのか――米国、日本も他人事ではない理由藤田正美の時事日想(2/2 ページ)

» 2014年05月14日 07時30分 公開
[藤田正美,Business Media 誠]
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ASEANは対中国で“結束”を保てるか

 今後を占うポイントの1つは、ASEANが“結束”を保てるか。領有権問題を平和的に解決するとした2002年の「南シナ海行動宣言」は法的な拘束力がないが、この宣言に拘束力を持たせるところまで、歩調をそろえることができるかどうかということだ。

 南シナ海の自由航行権を主張する米国は、この行動宣言に実質的な重みを持たせることを狙うだろう。一方で、中国はそうしたASEANの動きに対し、一定の配慮をしながらも、二国間の問題であるとの立場を崩さずに、領有権の拡大や資源開発の利益を確保しようとするはずだ。

photo 日本がASEAN諸国と連携できるか、という点もカギとなる(出典:首相官邸HP)

 もう1つのポイントは、こうした中国の動きが、果たして北京指導部の意思なのかどうかということだ。爆発事件が起きた新疆(しんきょう)ウイグル自治区やチベットなどの少数民族問題もさることながら、経済が停滞してくれば、地方によっては不満が溜まってくるだろう。

 さらに中国の人民解放軍は、それぞれの軍管区の中でビジネスを展開するなど、中央の統制が行き届かないところもある。歴史的には軍閥が跋扈(ばっこ)した時代も長かった。もし今回の動きに、国有企業のために中国海警を動かしたというような背景があれば、北京の押さえが効いていないということになる。

国内問題の目をそらす目的で“暴走”する可能性

 さらに問題なのは、中国自身が経済的に大きなリスクを抱えているということだ。このコラムでも何度か触れているが、シャドーバンキングではすでにいくつかのデフォルト(債務不履行)が起きている。その規模は、いわゆるシステミックリスク(金融制度全体を揺るがすようなリスク)に発展するほどのものではないとされている。

 しかし、シャドーバンキングの不良債権は必ず誰かが負担しなければならない。それが国有企業などの製造業に影響するようなことがあれば、その影響は大きくなる。そして国内に危機を抱えれば抱えるほど、対外的に暴走する可能性も高くなる。外国への挑発によって国内の危機から目をそらす手法は、世界の歴史において(もちろん現在もある)、あまりにも例が多い。

 そして日本だ。中国がもし、南シナ海で何の問題もなく権益を確保すれば、次の標的は尖閣諸島になるだろう。南シナ海を先例として考えれば、ありそうなシナリオは、中国漁民の緊急避難に名を借りた上陸である。そして、自国民の保護を名目に公船あるいは軍艦を派遣してくるかもしれない。そのとき、海上保安庁や自衛隊はどう対処するのか。集団的自衛権などの議論はともかく、まずは目の前のリスクに対処することが重要だ。

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