地方鉄道とパークアンドライド──観光鉄道を生かせない「アプローチ路線」の機会損失杉山淳一の時事日想(3/5 ページ)

» 2014年05月09日 08時00分 公開
[杉山淳一Business Media 誠]

マイカー利用者に注目する観光鉄道

 地方鉄道で「観光型パークアンドライド」の取り組みが進んでいる。その理由は、大都市から地方鉄道の始発駅までの鉄道路線が不便、あるいは観光客に魅力がないからだ。

 大井川鐵道はJR東海の東海道本線の金谷駅で乗り換え可能だ。大井川鐵道といえばSL列車の老舗である。かつて、大井川鐵道のSL列車は金谷駅を発着しており、東海道線からの乗り換え客の便宜を図っていた。大井川鐵道の金谷駅は機関車の方向転換設備がないため、千頭行きのSL列車の最後尾に電気機関車を連結し、逆向きで金谷駅に送り込むという手間をかけていた。

photo 大井川鐵道は新東名高速から7分、東名高速から15分のアクセスをアピールする(出典:大井川鐵道Webサイト)

 しかし、大井川鐵道は2011年にSL列車の金谷駅乗り入れを休止してしまった。SL列車はすべて金谷駅のとなり、車両基地がある新金谷駅始発となった。その理由は、金谷駅からの乗客が減り、新金谷駅からのマイカー客のほうが多くなったからだという。現在、金谷駅と新金谷駅の間は、SL列車に接続する電車が運行されている。

 新金谷駅は新東名高速道路「島田金谷インターチェンジ」から3キロ、約7分の位置にある。新東名高速道はサービスエリアやパーキングエリアの施設サービスが充実していると評判で、従来の休憩場所だけではなく、目的地になりつつある。そのドライブの折り返し地点として、大井川鐵道のSL列車はかなり魅力的だ。

 いすみ鉄道もマイカー利用者やバス利用者に注目している。その理由は東京湾アクアラインの料金値下げや圏央道千葉区間の開業だ。東京湾アクアラインの通行料金は開通当初普通車4000円と高額だった。しかし2009年8月から社会実験割引として普通車800円と大幅に安くなった。2013年4月からは、アクアラインから続く圏央道の木更津東インターチェンジから東金ジャンクションまでが開通した。途中の市原鶴舞インターチェンジを経由すれば、東京からデンタルサポート大多喜駅までは約1時間半のドライブとなる。これは東京駅からJR東日本の特急「わかしお」に乗り、大原駅でいすみ鉄道に乗り継ぐ時間と大差ない。

 私は数年前にデンタルサポート大多喜駅付近の町営駐車場を利用し、いすみ鉄道のホタル列車ツアーに参加した。当時、この駐車場は無料だった。その駐車場が2014年4月現在は有料である。いすみ鉄道と町営駐車場の認知度が高まり、利用者が増えて有料化に踏み切ったようだ。当時の私のように、農産物直売所に立ち寄って重い野菜をたくさん買い、ガソリンを補給するお客さんも多いだろう。いすみ鉄道はマイカー利用客へアピールすることで、自社の売り上げ以上に地域経済に貢献している。

photo いすみ鉄道のマイカー利用者向け案内にアクアラインの文字。JR東日本への配慮か、地図の鉄道路線が太く目立っている(出典:いすみ鉄道Webサイト)

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