際立ったもので人を引きつける――特売モデル「王道」のビジネスモデル(1/3 ページ)

» 2014年04月28日 08時00分 公開
[細谷功,井上和幸,西本伸行,Business Media 誠]

集中連載、「王道」のビジネスモデルについて

本連載は、細谷功、井上和幸、西本伸行著、書籍『ビジネスモデル×仕事術』(日本実業出版社刊)から一部抜粋、編集しています。

ビジネスモデルの世界には、コピー機の消耗品販売や広告で利益を得るなどの、長く続いているものが多くあります。これらは流行りものとは違い、長い年月の中で生き残ってきたものなので、それなりに安定して利益が上げられると言えます。成功している企業も多いので、参考にしやすいというメリットもあります。

本連載では、そのような安定感のある「王道」のビジネスモデルを
 トライアルモデル
 マッチングモデル
 冠婚葬祭モデル
 特売モデル
の4つに分けて紹介します。

なお、個人の仕事についても、これらのビジネスモデルから安定した働く基盤作りのヒントが得られるでしょう。


 特売モデルとは、文字通りスーパーなどの特売品で利益を上げるモデルを指します。スーパーの特売品はとても安く、利益が出ているとは思えません。それなのになぜ利益が出るのか――、そこに特売モデルの秘密があります。

 スーパーで買い物するシーンを思い出してください。スーパーで一品だけ買って帰ることはあるでしょうか。普通は一品だけではなく、複数の商品を買うと思います。複数の商品を買うということはそれぞれの商品から利益を得られるため、利益総額は多くなります。つまり、特売品だけでは利益が出なくても、トータルで利益が出ればビジネスとして成り立つということです。

 特売品だけ狙ってハシゴをする人もいますが、わざわざ1店1店移動してまで買う人は、全体から見れば少数です。特売モデルは、安い特売品を販売することで来店してもらい、複数の商品を購入してもらうことで、トータルで利益を得るモデルなのです。

 特売品になるものには、実は共通点があります。それは、需要が高いものです。チラシなどで目立つものは肉や卵、魚です。誰もが買うようなものが特売品になるのです。

 理由としては、単純に欲しいと思う人が多いからということと、毎日買うものだから顧客も価格が分かっており、安さが伝わりやすいということです。需要があって安さが伝わりやすいからこそ来店を促すことができるのです。

 スーパー以外にも特売品モデルは存在します。例えば、ネット通販でも似たような仕組みがあります。インターネットの場合、移動が不要なので特売品を一品ずつ買うことは手間ではありませんが、送料がかかるため、結果的に“何円以上送料無料”というラインまで購入してしまいます。安いものでひきつけて複数商品を買うという点で、これも特売モデルの1つと言えるでしょう。

 以前あった「100円マック」なども特売モデルに近い考え方です。100円という安さを打ち出すことで来店を促すのです。牛丼で有名な吉野家も牛丼を安くすることで、同時に頼む卵やみそ汁などで利益を得ています。

 特売モデルは名前の通り、安さで売る場合に非常に有効です。お金持ちであっても、すべてにおいて贅沢をするということはありません。安さというのは万人に響きやすい売り文句であり、安さを売りにする場合は特売モデルが役に立つのです。

 一方で、ブランド価値を保ちたい場合などはお勧めできません。来店を促したいからといって、高級なお店が特売モデルを利用すると、ブランド価値を棄損する可能性もあります。特売モデルはすべての場合に利用できるわけではありません。

 特売モデルは昔から存在する古典的なビジネスモデルですが、安さにひかれる人間の心理をうまく利用したモデルと言えるでしょう。

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