月980円のオンライン予備校「受験サプリ」は、どのようして生まれたのか上阪徹が探る、リクルートのリアル(3/6 ページ)

» 2014年04月25日 08時00分 公開
[上阪徹,Business Media 誠]

カリスマ先生を集めなければいけない

 一方で、カリスマ先生を集める必要があった。全国各地を回り、評判のいい先生を探した。実はプロジェクトチームでは調査の段階で、すでに先生へのアプローチを始めていたという。

 「先生がいないと事業は始められませんし、事業化できる説得力も出てこない。賭けでした。もし『New_RING』でダメなら、自分たちでやろう、とまで思っていましたから」

 カリスマ先生がリクルートの新しい取り組みに賛同してくれるのか。実は松尾氏自身、高いハードルがあると思っていた。

 「ここで最初の営業経験が生きたんです。『Hot Pepper』の広告を売るのに、まず大きなビジョンを語る。このスタイルで行こう、と。このサービスの哲学は、塾や予備校に通えない高校生を助けることです。これって不平等なことじゃないですか。学びたいけど学べない。所得格差、地域格差に基づく教育格差。これは当人の意思では解決できない。勉強したいのにできない子どもたちがいる現状を、私たちは変えていきたいんです、と」

 ところが、戻って来たのは、強い共感だった。

 「正直に言うと、偏見がありました。塾や予備校の先生は、もちろん教えるのは上手なのですが、あくまで商売でやっているんだと思っていたんです。ところが実際には、教育に対する思いが人一倍強かった。熱い人が本当に多かった。『賭けてみる』と言ってくださって」

 そして不安だったのが、日本の受験生たちが、動画サービスを受け入れてくれるかだ。

 「実はずっと自分の中では腹落ちしなかったことがあって。スマホやPCで動画授業を受けるなんてことが、本当にできるのか、と思っていたんです」

 人の集中が続くのは20分が限度だと聞いた。そこで、ワンチャプターは20分に決めた。そして、サンプルを高校生に見せたら、「これはいい」という声が返ってきた。

 「高校生たちにとっては、長時間スマホやPCで動画を見るのは、普通のことだったんです。実際、今は家に帰ると、彼らが真っ先に向かうのはテレビではなく、スマホやPC。YouTubeやニコニコ動画を見ている。動画は、ごくごく普通に受け入れられることが分かりました」

スマートフォンでも『受験サプリ』の講義を見ることができる

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