月980円のオンライン予備校「受験サプリ」は、どのようして生まれたのか上阪徹が探る、リクルートのリアル(2/6 ページ)

» 2014年04月25日 08時00分 公開
[上阪徹,Business Media 誠]

塾や予備校に通えない受験生

『受験サプリ』の編集長を務めている松尾慎治氏

 数人のモニターインタビューではない。松尾氏は、全国で100人以上に会いに行ったのだ。そして、驚くべきことに気づく。

 「進学先が決められない、という悩みはもちろんあったんですが、我々が完全に見過ごしていた話があって。受験勉強に困っている、ということです。『ウチはお金がなくて塾や予備校に行けない』『参考書を買うにも、お母さんに気が引けて言い出せない』……。一般受験で大学に入ろうとする人は、みんな塾や予備校に通っているだろうという先入観があって、最初はマイノリティだと思っていました。むしろ、自分がやり切るか、やり切らないか、自分との戦いだと思っていたんですよね」

 ところが、高校生たちが次々に同じ悩みを語り出す。松尾氏は、定量調査に踏み切った。出てきたのは、衝撃的なデータだった。通塾率が約3割しかなかったのだ。

 塾や予備校に通えない受験生を支援したい。まず浮かんだのは、入試の過去問題集を無料でいくらでも閲覧できるサービスの展開。だが、やがて受験サービスの核心は、授業ではないか、ということにプロジェクトチームの結論は行き着く。ネット上で過去にない価格で実力派講師の講義動画を展開してはどうか、と。こうして新規事業『受験サプリ』のオンライン予備校の芽は生まれた。

 こういうときにリクルート関係者が真っ先に取る行動がある。新規事業開発コンテスト「New_RING」への応募だ。どうしてあれほどリクルートから次々に新規事業が生まれるのか。そこで重要な役割を果たしているのが、このコンテストなのだ。

 その歴史は古く、1981年にさかのぼる。「RING」はRecruit Innovation Groupの略。新規事業の創造とともに、従業員へのイノベーションマインドを浸透させる重要な施策として生まれた。1990年から「New_RING」にリニューアルされ、今も毎年行われている。

 3人以上のグループ単位で参加。活動費も支給され、審査合格後は活動費数百万円が支給される。賞金はグランプリが200万円、準が100万円。そして事業化に取り組める。

 事実、『カーセンサー』も『ゼクシィ』も『ダ・ヴィンチ』も『Hot Pepper』も『R25』もここから生まれた。そして2011年のグランプリ受賞が『受験サプリ』だ。

 「アイディアが固まると真っ先に、『New_RING』に出そう、ということになりました。一次レポートは、A4で4〜5枚くらいを、私たちプロジェクトチームが分担して私が規定のフォーマットに書き込みました」

 メンバーは5人。松尾氏と上司、同僚たちである。書類審査に通過すると、韓国に行った。

 「韓国は日本以上に受験戦争が激しいんです。今のナンバーワン予備校は、オンライン予備校の『メガスタディ』。そこに成功要因を見定めに行きました」

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