出版社勤務後、世界のカルチャーから政治、エンタメまで幅広く取材、夕刊紙を中心に週刊誌「週刊現代」「週刊ポスト」「アサヒ芸能」などで活躍するライター。翻訳・編集にも携わる。世界を旅して現地人との親睦を深めた経験から、世界的なニュースで生の声を直接拾いながら読者に伝えることを信条としている。
今から数年前のこと、欧米企業の幹部で中国支部を取り仕切る友人と、シンガポールでビールを飲み交わしていたら、彼が家族とインドを訪れた話になった。彼は妻と2人の子どもを連れてインド支部の幹部宅をバケーションで訪問していたという。
最も盛り上がったのはトイレの話だ。「一番困ったのはトイレ。インドはトイレがマジできつい。友人宅やそれなりのホテルならまだしも、どこかに外出してトイレに行きたくなったら悲劇だよ。あいつ(インド支部の幹部)は、建物のトイレには入っちゃいけないと言うんだ。病気になるから、トイレに行きたくなったら外でしたほうが安心だって(笑)」
そんな著者も、インド各地で取材をするなか、子どもが道ばたで排泄している場面に何度も遭遇したことがあるし、ムンバイのスラムでは、オヤジがこちらに尻を向けて排便しているのを目撃したこともある。このユルさがインドらしいと笑い話のネタにしてきたが、衛生面を考えれば、決して笑って済む話ではない。
インドは世界的に見ても、排泄の衛生問題がかなり深刻な国の1つだ。インドは世界で最も多くの人が屋外で排便をしている国であり、いわゆる“野グソ”人口はなんと6億2000万人以上にのぼる。つまり、全国民の半分はトイレで排便をしない。しかも、親のうち44%は子どもの糞便をゴミ箱ではなく、外に捨てているという。屋外に放置される排便の総量は、1日あたり6500万キロ(!)に達すると試算されている。
さらに驚くのが、これでもここ10年ほどで状況がかなり改善されたという事実だ。10年前のことは考えたくもないが、この改善も都市部に限った話。地方に住む約7割の人々はトイレにアクセスできない状況にあるという。
こうした環境から子どもが受ける被害が深刻で、インド国内で大きな問題になっているのはご存じだろうか。
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