私はOculus Riftを体験し、ゲームや3DCGの世界だけでなく、別の用途でも活用の場が広がると強く感じた。前述のオリンピック招致活動のように、建築物など巨大な物体の完成予想をプレゼンするといった使い方は朝飯前だろう。コンテンツとPC、そしてOculus Riftを準備すれば、従来よりはるかに低コストで同じことができる。マンションの仮想モデルルームや、リフォームの完成予想といった使い方も考えられる。
「Hiyoshi Jamp」のように360度の実写映像を利用すれば、時空を超えた仮想旅コンテンツも可能性がある。旅行代理店などに設置し、観光客の誘致に使ってはどうだろう。もっとも、放っておいてもそんなビジネスよりも先にエロ方面――アダルト動画などのコンテンツが潤沢に登場して、VRが普及していくのかもしれないが。
「コンテンツを送出するマシンパワーの問題が解決すれば、一度にたくさんの人が同じコンテンツを同時体験することも可能」(アップフロンティア チーフソフトウェアエンジニア 名倉丈治氏)とのことで、プラネタリウムやアーケードゲーム、テーマパークの4D系アトラクションといった映像系の装置を、Oculus Riftに置き換えることで設置面積やコストの節約が可能になるケースはたくさんある。例えば、ゲームセンターで展開しているレーシングゲームや、ガンシューティングゲームといった大がかりなディスプレイを使った装置を開発する必要はなくなるだろう。
没入型のHMDについて、これまではコストに見合うだけの効果が期待できないとして「あれば面白いんだけど……」と導入を断念した場面はたくさんあるのではないか。Oculus Riftの存在は、そのハードルを一気に下げてくれた。
2014年3月17〜21日に開催されたゲーム開発者向けイベント「GDC」で、ソニー・コンピュータエンタテインメント(SCE)もついに「Project Morpheus」(プロジェクト モーフィアス)という名称のOculus Riftのような没入型HMDを開発していることを発表した。これも発売が待ち遠しい。
また、NTTとドワンゴもライブ会場の様子を360度の動画カメラで撮影し、遠隔地の視聴者が没入型HMDで鑑賞するという技術を共同で開発したという(参考リンク)。この発表はOculus Riftのような安価な没入型HMDの登場を意識してのことだろう。Oculus Riftをはじめとする没入型のHMDは、今後ゲーマー向け製品の枠を超え、さまざまな場面で活躍が期待できる。Facebookのマーク・ザッカーバーグCEOは、そこにいち早く注目した人の一人ということなのだ。
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