全く興味がなかったのに、なぜ「花の魔力」に取りつかれたのか仕事をしたら“珍しい花”を見つけた(後編)(2/4 ページ)

» 2014年04月16日 08時00分 公開
[土肥義則,Business Media 誠]

お前には殺気が足りない

土肥: 現在は、花の卸問屋「花宇」の5代目として活躍されているわけですが、ご自身の家庭環境を考えると「あ〜、オレって、いつかは家業を継ぐのかなあ」と漠然と考えていたのでは?

清順: ないです、ないです。若いころのオレは「野球ほどおもろいもんはない」「格闘技ほど燃えるもんはない」といった感じで、「花の世界なんか絶対に行かへん」と思っていました。

 しかし、ボルネオ島の山を登って、自分の人生が180度変わった。そして、今は花がすべて。例えば、これまでフランスには10回以上行っていますが、いまだにルーブル美術館に行っていませんから(笑)。それほど花のために動いています。

土肥: 花宇の創業は1868年(明治元年)。当時は、大阪や神戸などにリヤカーを引っ張って行き、野菜の苗や花の苗などを売っていたそうですね。その後、事業は継続されるのですが、いろいろな事情があって、4代目のお父さんはほとんどゼロからのスタート。しかし、お父さんは「よそと同じことをやってもしゃあない」という考えがあって、海外でのプラントハンティングを始められた。

 世界の珍しい花を扱うことで、フラワーデザイナーや華道家などから注目され、花宇はV字回復。今では全国各地から依頼を受けるわけになるのですが、清順さんは修行時代に、お父さんからこう言われたそうですね。「お前には殺気が足りない」と。

清順: 言われましたねえ。働き始めたころに言われたので、そのときは「えらい世界に入ってしまったなあ」と思いました(笑)。今の時代、殺気が必要な職業ってあります?

土肥: 聞いたことがないですね。で、今は、ご自身で「殺気」があると思われますか?

清順: それは分かりません。命を懸けて一生懸命働いていることは確かなのですが、それと殺気は違うはず。ただ、普段仕事をしながら何かを抑えている。それがひょっとしたら「殺気」なのかもしれません。もしその殺気をむき出しにしてしまうと、周囲はビビッてしまうので抑えていますね。

 しかし、山で仕事をしているときには殺気を放っているかもしれません。例えば、雪山で花を探しているときは、甘えが許されない。ひとつ間違えると、死ぬかもしれませんから。そんなときには殺気のスイッチが入っているでしょうね。

断崖絶壁でもそこに必要な花があれば採りにいく

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