職業「プラントハンター」――なぜこの男は命を懸けて花を採り続けるのか 仕事をしたら“珍しい花”を見つけた(前編)(2/5 ページ)

» 2014年04月09日 08時00分 公開
[土肥義則,Business Media 誠]

「プラントハンター」という仕事

土肥: 清順さんは21歳のときからプラントハンティングを始められたそうですね。日本ではあまり聞き慣れない「プラントハンター」って、どういう仕事なのでしょうか?

清順: プラントハンターは200〜300年前からある伝統的な職業でして、もともとは欧州の貴族のために危険を冒してでも海を越えて植物を探しに行った、と言われています。人間というのは「豊かになりたい」という生き物なので、欧州の貴族は富を得たあとに、自分の生活を豊かにするためにいろいろなことを始めたんですよ。家を建てる、いい家具に囲まれる、おいしいご飯を食べる、好きな音楽を聴く――といった感じで。その中のひとつに、美しい花を見る、甘い実が採れる木がほしい、という欲がわいてきたのではないでしょうか。

 家だったら建築家が建て、おいしいご飯は料理人がつくって、家具は職人がつくる。じゃあ、木や花は? といったときに、プラントハンターがそれを見つけて、届けていました。

 ですが、今の時代は違う。王様や貴族だけのために、花を採っているわけではありません。もちろん王様や貴族のために採ってくることもありますが、企業や個人が「ココにこんな花があったらいいのになあ」というニーズがあれば、それを届けなければいけない。

 ホテルや百貨店などに飾っている花の95%以上は、PCをたちあげて、クリックすれば買えるんですよ。何が言いたいかというと、オレは普通の人が絶対に手にできない花を届けることができる、ということ。日本にいたら想像もできないような花が世界中にあるので、それを手にする。

土肥: 誰もできないような仕事をされているわけですが、「プラントハンター」という言葉を初めて聞いたとき「日本にはないタンポポを採ってきて、それを売る」といったイメージだったんですよ。言葉は悪いですが、“お花摘み”をしているような。でも、実際は違う。ものすごく大きな木であったり、見たこともないような花を採っている。しかも普通の人は絶対に行けないようなところであっても、危険を顧みずにどんどん採っていく。

 命を懸けて仕事をされているなあ、という印象を受けましたが、具体的にどのような流れで仕事をされているのでしょうか。

スペインにて。樹齢1000年を超えるオリーブを小豆島に移植した

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