日本の道路インフラはもう“限界”――道路の新設を止め、維持管理を優先せよINSIGHT NOW!(1/2 ページ)

» 2014年04月08日 16時30分 公開
[日沖博道,INSIGHT NOW!]
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著者プロフィール:日沖博道(ひおき・ひろみち)

パスファインダーズ社長。25年にわたる戦略・業務・ITコンサルティングの経験と実績を基に「空回りしない」業務改革/IT改革を支援。アビームコンサルティング、日本ユニシス、アーサー・D・リトル、松下電送出身。一橋大学経済学部卒。日本工業大学 専門職大学院(MOTコース)客員教授(2008年〜)。今季講座:「ビジネスモデル開発とリエンジニアリング」。


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 東日本大震災から3年、復興がいっこうに進まないという声がそこかしこで聞こえます。政府が提唱する「国土強靱化」の掛け声と景気回復に背中を押された建設ラッシュによって、人手と資材、建機や輸送車などが需要に対して不足し、価格が高騰しています。

 そのため、計画当初の予算に収まりきらず、入札が不調になり工事が進まないのです。ましてやこの後、増税を見越した5.5兆円の経済対策、東京オリンピックへ向けた首都圏の整備といった要素が重なり、今以上に事態が悪化する可能性が高いでしょう(参考リンク)。

 また、その裏で恐ろしい事態も起きています。橋が老朽化したり道路が陥没したりして通行止めになるなど、通行規制になるケースが全国で急増しています。実は日本では今、高度経済成長期に集中的に建設された道路インフラが寿命を迎えつつあるのです。老朽化に関する問題は、随分前から警告されていながら、予算不足を理由にほぼ放置されてきました。

 国土交通省は2013年末に、全国のインフラ(道路や空港などの建築物)の維持管理や更新にかかる費用が、10年後の2023年度には2014年度より最大4割増えて年間4.3〜5.1兆円に達するとの試算を発表しました(参考資料)。この試算には先に触れた、インフラ建設関連のコストが急増している状況がどれほど反映されているかは分かりませんが、官公庁の建設コスト見積りには後になればなるほど膨れ上がる傾向があることは留意すべきです。いずれにせよ、この先道路インフラだけでも、維持管理にとてつもないコストがかかることは確かなようです。

点検されていない橋や道路が次々と

 国土交通省は、2014年度から道路の橋やトンネルの定期点検を地方自治体に義務づけており、建設から50年以上経ったものや災害時の輸送道路を優先して点検するよう求めるそうです。昨今のインフラ危機に対し、管理責任者としての自覚と維持実行を求めた格好です。

 しかし、自治体の多くは専門的知識を持った人員がおらず予算も不足している上に、そもそも危機意識も希薄であるのが実態でしょう。管理資産でありながら、トンネルの点検をまったくしていないことを指摘した取材メディアに対し「トンネルというものは壊れないものだと思っていた」と言い訳をする自治体が続出したことや、点検マニュアルすら所有していない自治体があることが発覚しました。

 一方、橋や道路そのものは大丈夫なのでしょうか。少なくとも高速道路の上をまたぐ陸橋のうち、まったく点検されていないものが全国に635本あることを、2013年9月に会計検査院が指摘しています。また、陸橋を管理する自治体などの点検状況を高速道路各社が把握していない陸橋も約3500本あることが分かりました。

 私の知る限りでは、普通の自治体では道路インフラに対して、日常的な点検・予防措置は行っていません。住民やドライバーが破損や崩落を指摘してはじめて現場状況を把握し、修復の手配をするのが精いっぱいです。

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