「マイルドヤンキー」論がもてはやされる理由窪田順生の時事日想(1/3 ページ)

» 2014年04月08日 08時00分 公開
[窪田順生,Business Media 誠]

窪田順生氏のプロフィール:

1974年生まれ、学習院大学文学部卒業。在学中から、テレビ情報番組の制作に携わり、『フライデー』の取材記者として3年間活動。その後、朝日新聞、漫画誌編集長、実話紙編集長などを経て、現在はノンフィクションライターとして週刊誌や月刊誌でルポを発表するかたわらで、報道対策アドバイザーとしても活動している。『14階段――検証 新潟少女9年2カ月監禁事件』(小学館)で第12回小学館ノンフィクション大賞優秀賞を受賞。近著に『死体の経済学』(小学館101新書)、『スピンドクター “モミ消しのプロ”が駆使する「情報操作」の技術』(講談社α文庫)がある。


ヤンキー経済』(幻冬舎)

 最近、「マイルドヤンキー」なんて言葉がもてはやされている。

 ご存じの方も多いと思うが、博報堂の原田曜平さんが著書『ヤンキー経済』(幻冬舎)の中でつくった言葉で、「上京志向がなく、地元で強固な人間関係と生活基盤を構築し、地元から出たがらない若者たち」のことだ。

 地元愛から派生するふわっとしたナショナリズムゆえ安倍自民の支持者が多いことから、「新保守層」とも呼ばれるマイルドヤンキーは低所得の方が多いらしい。しかし、酒、タバコ、クルマという都会の若者が手を出さなくなったモノにまできっちり消費をする傾向があるので、低成長時代の消費の主役になると期待されているのだ。

 実は数年前から評論家や賢い人たちの間では、日本経済で「ヤンキー」がひとつのキーワードになる、というのは論じられていた。そんなさして目新しくもない話がここまでブレイクした理由は、「マイルドヤンキー」というキャッチーなネーミングによるところが大きい。

 「ヤンキー」といえば暴走族的荒くれ者のイメージなのに「マイルド」。このようなギャップというか、落差のある組み合わせをメディアは好む。

 昔、違法金融なんてマイナーなテーマを細々と取材していた時、ある日を境に急にテレビの出演依頼や講演依頼、大手新聞記者から問い合わせが殺到したことがある。

 それまでは「闇金? まあ、そんな連中もいるでしょ」なんて冷めた反応だった記者たちもいきなり前のめり。いったい何があったのかと思ったら、なんのことはない、誰かが「ソフト闇金」という言葉をつくって、世にふれまわったのである。

 金のネックレスがジャラジャラしているイメージの闇金が「ソフト」ってどういうこと? というのがフックになったわけだ。

 そういう意味では、「マイルドヤンキー」という言葉を編み出したセンスはただただ素晴らしいと感服するわけだが、ひとつだけ心配事がある。

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