「ToKoPo」知っていますか? 地下鉄のポイント還元施策から見えてくること杉山淳一の時事日想(1/4 ページ)

» 2014年04月04日 08時00分 公開
[杉山淳一,Business Media 誠]

杉山淳一(すぎやま・じゅんいち)

1967年東京都生まれ。信州大学経済学部卒。1989年アスキー入社、パソコン雑誌・ゲーム雑誌の広告営業を担当。1996年にフリーライターとなる。PCゲーム、PCのカタログ、フリーソフトウェア、鉄道趣味、ファストフード分野で活動中。信州大学大学院工学系研究科博士前期課程修了。2008年より工学院大学情報学部情報デザイン学科非常勤講師。著書として『知れば知るほど面白い鉄道雑学157』『A列車で行こう9 公式ガイドブック』など。公式サイト「OFFICE THREE TREES」ブログ:「すぎやまの日々」「汽車旅のしおり」、Twitterアカウント:@Skywave_JP、誠Styleで「杉山淳一の +R Style」を連載している。


 「ToKoPo」をご存じだろうか。都営地下鉄、都電、日暮里・舎人ライナーを利用するたびにポイントを獲得でき、ためたポイントをPASMOの電子マネーとして還元できる、東京都交通局が展開するポイントサービスだ。2011年8月に始まったサービスなので、すでに2年半が経過しているが、知名度はさほど高くはないように思える。

 先日、消費税増税のタイミングを狙って企画されたムックに関わった。打ち合わせの席で「ToKoPo」を挙げたところ、おトク情報に詳しいという担当編集者もご存じではなかった。その編集部は都営地下鉄の駅に近くにあり、都営地下鉄を利用する機会も多いのに。実にもったいないことである。

 もっとも、都営地下鉄については他に手段があるなら敬遠する向きはあるのかもしれない。東京メトロほか他社の綿密な路線網があって、たいていの場所に行ける。都営地下鉄は運賃が高いイメージもある。都営地下鉄の初乗り運賃は現金で180円、ICカードで174円(都営地下鉄の運賃改定は6月1日)。対して東京メトロの初乗り運賃は現金で170円、ICカードで165円(同)。わずか10円程度の差だけど、都営地下鉄は料金区分が細かいため、遠くまで乗ると運賃の上昇幅が大きくなる。10キロメートル区間で比較すると、東京メトロは200円(IC:195円)、都営地下鉄は270円(IC:267円)。70円も差が付いてしまう。

 一応、東京メトロと都営地下鉄を乗り継ぐと(そのまま初乗り運賃が加算されるのではなく)70円引き(現金の場合)になる。この割引額は利用者の運賃改訂後もそのまま適用される。現金払いの初乗り運賃同士で計算すると、4月1日から5月31日までは都営170円+メトロ170円の340円から70円を引いて270円。6月1日に都営地下鉄が新運賃になると、都営180円+メトロ170円の350円から70円を引いて280円となり、消費税増税前と比べると改訂より20円のアップとなる。ここは割引額を80円に改定してほしかった。

 割引制度が適用されても割高感はぬぐえないかもしれないが、そんな都営地下鉄がポイント還元制度を実施している。誰でも使える「ToKoPo」はもっと注目されていい。

photo 東京都交通局が展開するポイントサービス「ToKoPo」
 (※初出時、都営地下鉄の運賃改定日と東京メトロとの乗り継ぎ割引額の部分に誤りがありました。お詫びして訂正致します)

誰でも使える「ToKoPoカード」、もっと注目されていい

 「ToKoPo」は都営地下鉄を記名式PASMOで利用する人なら無料で入手できる会員カードだ。クレジットカードではないので、もちろん子どもや学生も利用可能。あまり知られていない理由は、手続きがちょっと面倒で、還元率もやや低いので、話題になりにくいからかもしれない。

 東京都交通局によると、現時点の利用者は約8万人とのこと。都営地下鉄の1日の利用者数は約237万人(2012年度)のため、ToKoPo利用者はその約3%程度ということになる。

photo 東京都交通局が発行する「ToKoPoカード」(私物)
photo 都営地下鉄の駅に設置されているPASMOチャージ機。「ToKoPo」ポイントの照会、還元チャージ作業ができる

 そのToKoPoカードのちょっと面倒な(笑)手続き方法を紹介する。東京都交通局の公式Webサイトで申し込むと、2週間ほどで郵送にてカードが届く。続いて、届いたToKoPoカードとPASMOを持って都営地下鉄の駅へ行き、チャージ機で2つのカードを関連付ける作業を行う。これでようやく使えるようになる。もちろんこの手続きは初回だけで、あとは普段通りにPASMOで都営地下鉄を利用するだけで乗車ポイントが加算されていく。ToKoPoカードはたまったポイントをPASMOへ還元するときだけ必要で、普段は携帯しなくてもいい。

 ポイントは、都営地下鉄と日暮里・舎人ライナーの1乗車(改札入場から退出まで)で2ポイント、都電荒川線は1乗車で1ポイントがたまる。つまり、地下鉄で1往復すると4ポイント。たったの4円分かと思うと少しさびしいが、土休日であれば1日につきプラス2ポイント、さらに地下鉄、都電、日暮里・舎人ライナー、都営バスを乗り継いだときも1日につき2ポイントが加算されるボーナスもある。ちなみに、都営バスは乗車ポイントが付かない。PASMOが使えるバスには、別途「バス得(バス利用特典サービス)」(関連記事参照)という10%ほどの還元制度があるからだ。都営バスは乗り継ぎ時のボーナスポイントのみ加算の対象となる。

 ちりも積もればなんとやらで、土日に都営地下鉄で2往復ほど利用すると年間で624ポイント(52週で計算した場合)。還元は10ポイント単位なので620円分が還元される。私は都営地下鉄に乗り入れる私鉄沿線に住んでおり、普段も都営地下鉄を使うので、年間1500円分ほどの還元を受けている。

 もっとも、割引率は回数券のほうがずっとおトクである。しかし回数券は都度買わなければならないし、相互乗り入れ先から利用するときは有人改札を使う必要がある。この面倒と比べると「ToKoPo」は無意識にためられる。チャージ還元されたものは都営地下鉄以外の乗車はもちろん、駅の売店や自販機でも使える。それがなんとなく愉快でもある。


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