葛西選手の銀メダルから考えた「広がる主役年齢」博報堂・吉川昌孝のデータで読み解く日本人(3/4 ページ)

» 2014年03月27日 00時00分 公開
[吉川昌孝,Business Media 誠]

「正義の味方」も高齢化。「三匹」から見るドラマ主人公の変遷

 この冬、話題になったドラマにテレビ東京系の『三匹のおっさん』があります。還暦を過ぎたかつての悪ガキ3人組が、町内の悪者を退治し、問題を解決しているというドラマです。「ドラマの主役も時代に合わせて高齢化するんだな」と感じましたが、これをかつて「三匹」という名を冠したドラマの主人公をされた役者さんの放送開始時の年齢比較から分析してみましょう。

「三匹のおっさん」

放送:2014年1月〜3月

三匹:北大路欣也 1943年2月生まれ 70歳

   泉谷しげる 1948年5月生まれ 65歳

   志賀廣太郎 1948年8月生まれ 65歳

「三匹が斬る!」

放送:1987年10月〜88年3月

三匹:高橋英樹 1944年2月生まれ 43歳

   役所広司 1956年1月生まれ 31歳

   春風亭小朝 1955年3月生まれ 32歳

「三匹の侍」

放送:1963年10月〜64年4月

三匹:丹波哲郎 1922年7月生まれ 41歳

   平幹二郎 1933年11月生まれ 30歳

   長門勇  1932年1月生まれ 31歳

(注:第2シリーズ1964年10月より 丹波哲郎→加藤剛 1938年2月生まれ 26歳)

 いかがですか? これまでの「三匹」が40代前半から30代前半での出演だったのに対し、今回の「三匹」は3人ともアラセブ(四捨五入で70歳)です。ドラマの主人公が一気に高齢化したのは一目瞭然。ただし、『三匹のおっさん』は高齢者だけのドラマではありません。主人公の孫や子どもも重要な役どころで出演。70代から20代までの幅広い役者さんが、登場しているのです。これまでの「三匹」がどちらかというと主人公に近い年齢層中心の物語だったのに対して、この年齢幅の拡大はメダリストや紅白歌合戦の出場歌手と同じ傾向ではありませんか。

 さらに面白い点があります。それぞれの「三匹」の放送の間が25年前後ということです。『三匹の侍』と『三匹が斬る!』が24年、『三匹のおっさん』までが26.5年。ほぼ4半世紀に1回、「三匹」が登場する、というわけです。そして今回登場した「三匹」は、時代劇ではなく、現代劇。今の時代にごく身近で起こる問題を解決する「正義の味方」。過去の「三匹」はそれぞれ高度経済成長時代とバブルの少し前の時代。現実には問題が見つけにくく、時代劇の中で描くことでドラマになった。それが、今は時代劇ではなく、現実の社会の中でのほうが、よほどたくさんの問題がある、そんなことを感じさせる設定の変化ですね。

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