葛西選手の銀メダルから考えた「広がる主役年齢」博報堂・吉川昌孝のデータで読み解く日本人(1/4 ページ)

» 2014年03月27日 00時00分 公開
[吉川昌孝,Business Media 誠]

吉川昌孝のデータで読み解く日本人:

 30年以上にわたり生活者を研究し続けてきた「博報堂生活総合研究所(生活総研)」。同研究所の主席研究員である吉川昌孝氏が、生活総研オリジナル調査「生活定点」などのデータを用いて、“時代の今とこれから”を読み解きます。

 「生活定点」とは、1992年から20年間にわたって隔年で実施している時系列調査。衣食住から地球環境意識に至るまで、人々のあらゆる生活領域の変化を、約1500の質問から明らかにしています。現在、生活総研ONLINEで20年間のデータを無償公開中。こうした生活者データから得られる“ターゲット攻略のヒント”はもちろん、ビジネスパーソンの日々の仕事に役立つ“データを読み解く技術”などもご紹介していきます。


著者プロフィール:吉川昌孝

 博報堂生活総合研究所研究員、および動態研究グループ・グループマネージャー。1965年愛知県生まれ。慶應義塾大学商学部卒、同年、博報堂入社。マーケティングプランナーとして得意先企業のマーケティング戦略立案業務を担当。2003年より生活総合研究所客員研究員となり、2004年より生活総合研究所に異動。2008年より未来予測レポート『生活動力』のプロジェクトリーダー。著書に『亞州未来図2010−4つのシナリオ−』(阪急コミュニケーションズ・共著)、『〜あふれる情報からアイデアを生み出す〜「ものさし」のつくり方』(日本実業出版社)などがある。


 ソチオリンピックで銀メダルを獲得した葛西選手。冬季五輪で、日本人選手最年長の記録になったのも記憶に新しいところ。このニュースをきっかけに、ここ数年の日本人メダリストのメダル獲得年齢を調べてみました。さらに、音楽の世界、ドラマの世界と、ある視点で年齢の変遷を追ってみると、ある事実が浮かび上がってきたのです。今回は主役年齢の変遷から、日本の高齢化の実態と今後に迫ります。

メダリストは高齢化、と同時に進む低年齢化

 今回のオリンピックで、日本人選手最年長の葛西選手の銀メダル獲得と同時に話題になったのが、男子スノーボードハーフパイプでの平野選手の銀メダル。若干15歳と史上最年少のメダル獲得がニュースになりました。同じく銅メダルの平岡選手も18歳、男子フィギュアスケート金メダルの羽生選手も19歳ですね。

 ということで、冬季オリンピックでの最年長メダリストと最年少メダリストの変遷を1998年の長野オリンピックから5回分見てみました。黄色い線が最年長、グリーンの線が最年少、ピンクの線はそのオリンピックでのメダリストの平均年齢です。

 確かにメダリストは高齢化していました。2006年のトリノオリンピックまでは最年長でも20代でしたが、前回のバンクーバーで一気に30代、そして今回40代に突入。一方の最年少は、低年齢化が進んでいます。これまでの最年少は19歳でしたが、今回一気に15歳まで下がりました。グラフで見ると、上下両方に獲得年齢の幅が広がっているのです。

 そしてもう1つ注目すべきは、真ん中のピンクの線、メダリスト平均年齢は、ほとんど変わっていない、という事実です。確かにトリノオリンピックはメダルが女子フィギュアスケートの荒川選手の金メダル1つだったということもありますが、長野オリンピックや今回のソチオリンピックのように、メダル数が増えても平均年齢は25歳前後でほとんど変わっていません。

 ちなみに日の丸飛行隊で表彰台を独占した札幌オリンピック(1972年)での3人のメダリストの年齢はそれぞれ29歳、28歳、27歳。平均28歳と平均だけで見ると現在よりも高いですが、年齢幅でいうと、20代後半に集中していた、ということになります。

 つまり、10代中盤から40代まで、メダルを獲得できる年齢の幅が広がっているのが、ウインタースポーツ界と言えるわけです。

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