ガムでむし歯が治るってホント?――江崎グリコ 健康科学研究所訪問記一回2粒、20分かんでください(3/6 ページ)

» 2014年03月26日 08時00分 公開
[吉岡綾乃,Business Media 誠]
グリコ健康科学研究所 マネージャーの釜阪寛氏

――ここからはグリコのガム「POs-Ca(ポスカ)」について教えて下さい、釜阪さん。ガムというと、例えば気分をリフレッシュするとか、眠気を覚ます……といった目的でかむ人が多いと思うのですが、これはむし歯が治るガム、なんですよね。

釜阪: パッケージでは「初期むし歯対策ガム」とうたっています。初期むし歯の再石灰化・再結晶化を促進するガム……なんです。特保もとっていますよ。

――特保付きのガムというのも珍しいですね。歯にいいガムというと、例えばキシリトール入りのガムなどはおなじみですし、各社から出ていますが、他のガムとPOs-Caはどう違うんでしょう?

釜阪: キシリトールは1997年に日本に入ってきた代替甘味料です。代替甘味料というのは、砂糖の代わりに甘い味がする糖質のことですね。砂糖のガムと違って、キシリトール入りのガムは、かんでもむし歯の原因となる酸ができません。

――むし歯の原因は酸なんですか?

釜阪: そうです。歯は何からできているかご存じですか?

――うーん……外側がエナメル質で、内側が象牙質というのは覚えているのですが……。あれは何からできているんでしょう。

釜阪: 歯は97%以上が、カルシウムとリン酸からできています。カルシウム10個とリン6個が結びついた、「ハイドロキシアパタイト」という水晶のようなものが、ずらっと垂直に並んでいるのが歯なんです。この形状は非常に硬くて、人間の歯というのは水晶と同じ堅さです。ただ、酸に弱い。ここが弱点です。

 酸を生むのは、砂糖やブドウ糖です。これらを食べると、口の中でむし歯菌が糖を出して酸を出すんですね。むし歯菌は、誰の口の中にもあります。歯にはプラークと呼ばれる、むし歯菌のすみかがへばりついています。

歯の構造。エナメル質は、ハイドロキシアパタイトの結晶が規則正しく並んでできている(出典:グリコ健康科学研究所)

――プラークというのは、歯垢のことですよね。歯磨き粉のCMなどにも出てくるので聞き覚えがあります。むし歯菌は、プラークに住んでいるのですか。

釜阪: はい。プラークの原料は砂糖なんですね。むし歯菌は砂糖を原料に多糖を作り、それが唾液に流されないよう、歯にくっつけて強くしていくんです。これがプラークです。

――ということは、プラークが歯にくっついている限り、食事のあとでなくてもむし歯になる可能性がある……?

釜阪: そういうことです。むし歯菌はプラークを糖に分解して使うので、これが酸となり、むし歯の原因になるんです。つまり、プラークがある限りむし歯ができる可能性があります。口の中が酸性になると、その酸が歯のカルシウムを溶かし、歯からだんだんカルシウムが失われていく。この状態が続くと、歯に穴は空いていないけれど、エナメル質がスカスカになってしまいます。これが「初期むし歯(初期う蝕)」と呼ばれる状態です。歯医者さんだと「C0(ゼロ)」と診断されますよね。これよりむし歯が進んで歯に穴が空いてしまうと、歯医者さんに行って治療しないと治りません。

初期むし歯(初期う蝕)。プラークの中でむし歯菌が酸を出し、歯を溶かす。カルシウムが溶け出し、歯の成分がスカスカになってしまった状態だ(出典:グリコ健康科学研究所)

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