――生物化学研究所というのは、この江崎グリコ健康科学研究所の前身ですよね。酵素反応でグリコーゲンを作ると、どんないいことがあるんですか?
栗木: 酵素で作れば、予期せぬ微生物などが入ってくることがありません。それともう一つ、私たちの方法だと、自分たちの好きな大きさにグリコーゲンの分子を作ることができるのです。
すると面白いことに、“ある大きさのグリコーゲンだけが免疫に効く”ということが分かりました。今まで「何かが紛れ込んでいてそれが免疫に効くのでは?」と言われていましたが、そうじゃない。本当にグリコーゲンが免疫に効くこと、そして、効くかどうかは大きさで決まるということが分かったんです。
――グリコーゲンの大きさというのは、酵素から作れば、自由に変えられるものなのですか?
栗木: 私たちのやり方で作れば、ということになります。この酵素合成グリコーゲンを、江崎グリコ生物化学研究所では、2005年頃から世界に向けて発表しました。
――なるほど……。さきほど、今でもお菓子のグリコにはカキエキスから抽出したグリコーゲンが入っている、というお話がありました。純粋に酵素から作り出したグリコーゲンは、何かグリコの製品に使われているのですか?
栗木: 酵素合成で作ったグリコーゲンが入っている当社の初めての商品が、化粧品の「gg(ジージー)」です。
――えっ。グリコなのに化粧品……。そもそも、グリコーゲンって化粧品に使うものなんですか。
栗木: いろいろな年代の人の肌を調べたところ、肌の中のグリコーゲンが多い方が若々しいという結果が分かったんですね。それなのでggは、いわゆるアンチエイジング化粧品として販売しています。当社としては初の化粧品になります。
――お菓子メーカーの研究所を取材に来たはずなのに、薬に化粧品と思いがけないものがいろいろ出てきてちょっと戸惑っています……。
栗木: 話を元に戻しましょうか。そういうわけで、私たちは酵素についての研究を非常に重要視しています。私たちの原点は、糖質と酵素ですから。江崎グリコ健康科学研究所のミッションは「糖質工学の世界で、世界で最高のアウトプットをする」なんです。
――糖質工学って、どういう研究なのですか?
栗木: 糖を使って、糖をさまざまな形に加工したり、つなぎ替えたりして、求められる機能のものを作り上げる……という研究ですね。もともと私たちはグリコーゲンが出発点の会社です。グリコーゲンはブドウ糖が2種類の結合でつながってできているもの。私たちのコアコンピタンスは糖質工学です。そして糖質加工の鍵となるのは(糖を分解・加工するのに必要な)酵素ですから、糖と酵素が大切なんです。
グリコのオンリーワン商品は、グリコのオンリーワン酵素で製造されています。そのために、オンリーワン酵素の研究開発が、オンリーワン商品の商品力や競争力の決め手になる……そう考えているんです。
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