ビジネスモデルは必ず&(アンド)の発想でつくる世界を変えるビジネスは、たった1人の「熱」から生まれる(1/2 ページ)

» 2014年03月26日 08時00分 公開
[丸幸弘,Business Media 誠]

集中連載「たった1人の「熱」から生まれる」について

本連載は、丸幸弘著、書籍『世界を変えるビジネスは、たった1人の「熱」から生まれる。』(日本実業出版社刊)から一部抜粋、編集しています。

“PDCA”でイノベーションは起こせない。これからのビジネスは“QPMI”です。イノベーションを起こす魔法のしくみ「QPMIサイクル」とは、

 Q(question) たった1人の崇高な問題意識や疑問
 P(passion) それを解決したいという強い情熱
 M(mission/member)周囲を巻き込んでプロジェクト化する環境を作る
 I(innovation)結果として革新的なビジネスが生まれる

この4つです。

著者、丸幸弘は数々の革新的なビジネスをプロデュースし、自社内では「出前実験教室」など200以上のプロジェクトを同時進行させ、しかもそのすべてが黒字。そして、社員全員が理系の博士号or修士号を取得しているという異色の研究者集団企業「リバネス」の代表取締役CEO。

本書では、世界を驚かせるようなイノベーションを起こすためのしくみ“QPMI”を中心に、リバネス独自の取り組みと社内制度、そして具体的な事業内容を初公開。べンチャー起業家、新規事業立ち上げに携わる人、中小企業の経営者から未来を夢見る理系学生まで、広く読んでいただきたい1冊。


ビジネスモデルは「一石二鳥」の形で

 僕はビジネスモデルを考えるとき、必ず「一石二鳥」の形にできないかと頭をひねるようにしています。

 出前実験教室で言えば、もともとリバネスにあったのは、なぜ子どもたちの間で理科離れが進んでいるのかというクエスチョン(Q)と、それを解決したいというパッション(P)です。しかし、このプロジェクトを継続していくためには、お金が必要です。そこで、学校の先生のところに相談に行きます。

 最初は「お金がない」と言われます。でも、先生もやはり、子どもたちに最先端の科学を感じてもらいたいというパッションがあるのです。ならば、なんとかやりましょうよと持ちかけると「10万円までならなんとか……」というふうに、小さな一歩が踏み出せる。

 そこで、今度は企業に話を持って行きます。1つだけではなく、たくさんの会社に足を運びます。すると、そのうちの1社が「うちの試薬を使ってくれたら、お金を少し出してもいいよ」と言ってくれたりするのです。次は、別のプロジェクトで関わりのある企業に行って、広告を出してもらえないかと交渉してみる……。

 そんなふうにいろんな組織の人たちと会って話をして、僕たちのクエスチョンとパッションを伝えていきます。すると必ず道は開けてきます。 こうして、パッションを持ちながらアプローチを続けていくと、当初は予想もしていなかった額のお金が転がり込んできます。具体的には学校、自治体、企業、一般の4方向からお金を集め、出前実験教室は1回で約200万円を集められるしくみを作り上げています。

 なぜ、企業がスポンサーになってくれるかというと、そこに一石二鳥のメリットがあるからです。まず1つ目に、出前授業は企業の研究所の人材育成として役に立ちます。ふだんは研究ばかりしている所員が小中高の学校という全然違う世界に行き、自分たちがやっている研究を子どもたちに分かりやすく説明することで、コミュニケーション力やプレゼンテーション力が鍛えられる。

 そして、自分の研究を第三者の目で客観的に見直す貴重な機会を得ることができます。つまり、出前実験教室は教えてもらう子どもたちだけではなく、教える側の研究者にとってもとてもよい勉強の場になります。

 もう1つの側面として、出前実験教室はその企業のCSR活動になっています。企業が費用を負担して、最先端の研究の成果を子どもに伝えることは、いわゆる「教育CSR」というもので、社会に対する貢献なのです。さらに、このような活動を通して子どもたちに企業のことを知ってもらえる効果があります。

 このように、出前実験教室は一方からみると人材育成、もう一方からみるとCSR活動という両面を持っています。しかも、かかる予算は人材育成とCSRを別々に行った場合と比べて安くおさえることができます。1つの活動で2つの効果が期待できる上に、費用面でも一石二鳥であることが大きなメリットの1つです。

 よく言われることですが、ビジネスモデルを考えるときは相手にとって複数のメリットを提示できるかを考えるのが大切です。

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