職業人生の出発にあたり、心得ておきたいこと新社会人に贈る(5/5 ページ)

» 2014年03月25日 09時42分 公開
[村山昇,INSIGHT NOW!]
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 人間はどうしても自分のやっていることに意味を与えたくなる動物です。それは意味からエネルギーを湧かせたいためであるし、意味を満たすことによって自己の存在を太く感じたいからです。そして共通の意味のもとに人とつながりたいからです。

 「仕事に高尚な意味は不要」と言っている人の中には、実はボランティア活動に汗を流す人も多くいます。この問題の本質は、昨今の事業現場では各人が担当する業務があまりに細分化・専門化され、あまりに数値目標達成が重くのしかかっているために、自分の仕事に意味を与えづらくなっているところにあると私は分析しています。ですから人は決して意味を放棄しているわけではないのです。

 また、昨今ではメンタルヘルス(心の健康)の問題が大きくなっています。やはり、自分の仕事に意味を見出している人は、見出していない人よりも、当然ストレスに強くなります。上のフランクルは、実は収容所に送られる直前、長年の研究成果を出版する計画があり、原稿まで書き上げていました。収容所に囚(とら)われたフランクルは、あの論文を世に出版するまで死ねるかという執念に近い意味を持ち続けました。だからこそ、あの凄惨な収容所を生き抜く精神エネルギーを得たのだと言います。彼が発した「意味の鉱脈を掘り当てた人間は、同時に苦悩に耐える力を持った者になる」は、そうした含みです。

 みなさんはこれから何十年と働いていくにあたって、生命を取られるほどではありませんが、さまざまなストレスにさらされることになるでしょう。そのときに覚えておいてほしいのは、働く心の上で、最大の攻めであり、最大の守りとなるのは、仕事に意味を与えることです。その「意味」とは、先の「5つの動機」図でみたように「お金のために」というだけでなく、他の4つも含めて重層的に与えることが大事です。当面は仕事をこなすことだけに手一杯かもしれません。ですが、時間をかけながら、ぜひ上のほうの段階まで仕事への意味付けを分厚くしていってください。(村山昇)

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