ウクライナはどこに向かうのか? 今がターニングポイントだ藤田正美の時事日想(2/2 ページ)

» 2014年03月19日 07時30分 公開
[藤田正美,Business Media 誠]
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ウクライナ国内も不安定

 もう1つ重要なことは、ウクライナの暫定政権も決して安定しているわけではないということだ。ヤヌコビッチ大統領を追い出したとはいえ、2004年の大統領選で親西欧派が勝ったのに、結局は失敗した。政治経験が浅いために、妥協を知らないからだと言われている。まさにアラブの春(2010年から2012年にかけて、北アフリカや中東諸国で発生した一連の民主化運動)で目撃してきたように、既存の政権を打倒すれば、そこからは長期にわたって政治的な不安定が続く。

 ウクライナでは5月に大統領選挙を行うことになっているが、それすらも円滑に進むかどうか分からない。実際、暫定政権にはネオナチや民族主義者、左派までさまざまな勢力がいる(スナイパーを雇いデモ隊や警官隊に発砲させ、デモが過激になるきっかけをつくったのは暫定政権側の人物だったという「噂」もあった)。反ロシアとしてはまとまっていても、新しく政権を作るとなれば、とたんに求心力を失うのは目に見えている。

 つまり、大統領選挙を実施して反ロシア派が政権を取っても、その政権にどれほどの統治能力があるかはまったく分からないということでもある。今のところ欧米は制裁を声高に叫ぶものの、個人の資産凍結やビザの発給禁止など、効果が小さなことしかやっていない。さらにEUの中にもロシアと関係の深い国もあり、それらの国は制裁には及び腰だ。

 プーチン大統領は、民主主義のダブルスタンダードを突いて、実質的な利益を手に入れようとするだろうが、それも行き過ぎれば欧米との新たな冷戦構造を生みかねない。ロシアの収入源である資源輸出が阻害される可能性もある。妥協点をどのあたりに見出すか、プーチン大統領の手腕が問われるところだ。とりあえずは、G8サミットの準備がどうなるかが焦点となる。

 日本はと言えば、当面は“口だけ制裁”にとどめて、もう少し情勢を見極めることが必要だろう。間違っても、政府や党要人の「不規則発言」は避けなければなるまい。もしかすると、安倍政権にとってはそれが最も難しいことかもしれないが。

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