連載
» 2014年03月19日 08時00分 UPDATE

世界を変えるビジネスは、たった1人の「熱」から生まれる:「持続可能なしくみ」にはお金が必要

自分の「やりたいこと」を実現、持続させるためにはお金が必要です。強い情熱を持っている人は、稼ぐことにも力を注ぎます。やりたいことを実現するためにいろいろ考えるほうが、結果的に成功率は上がるのです。

[丸幸弘,Business Media 誠]

集中連載「たった1人の「熱」から生まれる」について

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本連載は、丸幸弘著、書籍『世界を変えるビジネスは、たった1人の「熱」から生まれる。』(日本実業出版社刊)から一部抜粋、編集しています。

“PDCA”でイノベーションは起こせない。これからのビジネスは“QPMI”です。イノベーションを起こす魔法のしくみ「QPMIサイクル」とは、

 Q(question) たった1人の崇高な問題意識や疑問
 P(passion) それを解決したいという強い情熱
 M(mission/member)周囲を巻き込んでプロジェクト化する環境を作る
 I(innovation)結果として革新的なビジネスが生まれる

この4つです。

著者、丸幸弘は数々の革新的なビジネスをプロデュースし、自社内では「出前実験教室」など200以上のプロジェクトを同時進行させ、しかもそのすべてが黒字。そして、社員全員が理系の博士号or修士号を取得しているという異色の研究者集団企業「リバネス」の代表取締役CEO。

本書では、世界を驚かせるようなイノベーションを起こすためのしくみ“QPMI”を中心に、リバネス独自の取り組みと社内制度、そして具体的な事業内容を初公開。べンチャー起業家、新規事業立ち上げに携わる人、中小企業の経営者から未来を夢見る理系学生まで、広く読んでいただきたい1冊。


 実際のところ、リバネスにいる社員はみんな高学歴です。東大や東工大を出て、修士号や博士号をもっている連中が集まっている。なかには、米国の大学で博士号をとってきたという人もいる。別に自慢しているわけではありません。単に大企業に行こうと思えば、行ける連中ばかりだということです。

 お金とか、金銭的な安定を求めるなら、一部上場の大企業に行けばいいでしょう。にもかかわらず、リバネスというベンチャー企業に来たということは、そこで「やりたいこと」があるからです。

 「やりたいこと」の中身は人それぞれです。ある社員は「科学を分かりやすく世の中に伝えたい」と思っているし、ある社員は「サイエンスで世界征服したい」なんて、ちょっとバカげたことを考えている。「植物の栽培が好きだから、自分は栽培王になる!」とよく分からないことを言っている人もいます。

 強いパッションは、QPMIサイクルを通じてイノベーションを起こすだけでなく、ビジネスにとっても好影響をもたらします。自分の「やりたいこと」がはっきりしている人間は、それを実現するための手段として、持続させるためのしくみを必死に考えます。僕らは役所や大学ではなく、純然たる民間企業ですから、自分のやりたい企画を実現したり持続させるためには、当然ながらお金をどこかで稼ぎ出してくる必要があります。つまり、何かをやりたいという強いパッションをもっている人間は、それを可能にするために、必然的にお金を稼ぐことにも力をそそぎます。

 一見遠回りなようですが、「もうけたい」から出発するよりも「やりたいこと」を実現するためにいろいろなことを考えるほうが、結果的に成功率は上がります。

 例えば、スペースシャトルに日本国内の大豆をのせて宇宙に運び、再び地球に戻してその影響を調べようという「宇宙大豆プロジェクト」(※)。

ks_spacesoy.gif 「宇陀黒大豆」と「かぐや姫大豆」は丹波黒大豆という同一の種類、山梨県と長野県の「ナカセンナリ」は同一の種類(=計19種類)。
※宇宙大豆プロジェクト=日本の16都道府県から集めた19種類の「大豆」をスペースシャトルで宇宙に打ち上げ、国際宇宙ステーション「きぼう」の日本実験棟で約10カ月間保存したあと、再び地球に戻して日本全国の学校で育てるというプロジェクト


 当初は、プロジェクトの狙いが壮大すぎて、スポンサーになってくれる企業がありませんでした。でも、「子どもたちに植物に対する関心の『タネ』を植え付けて、将来的には食糧自給率の改善につなげたい」というパッションを訴え続けていたら、「み子ちゃん」で知られる宮坂醸造株式会社がスポンサーになってくれました。それがきっかけで、ほかの企業からも協賛を得ることができました。そうして、全国の716名の子どもに宇宙大豆を配布することができたのです。子どもたちからは、その大豆を育てることで植物と宇宙の不思議を体感できたと感想が寄せられました。これはパッションが先にあって、あとからお金につながった一例と言えます。

 リバネスでは、営業を専門にする社員はいません。企画だけをやる社員もいません。どの社員も企画を考え、営業も担当する。全員で攻めて全員で守るバスケットボールのチームのように、すべての社員が複数の役割をこなしながらサイエンスとビジネスの両立を常に考えています。

 自分のやりたい企画を実現するためにビジネスのことも考え続けることが、リバネスがすべての事業で黒字を達成できている秘密です。

(次回は、「ビジネスモデルは&(アンド)の発想でつくる」について)

著者プロフィール:

丸幸弘(まる・ゆきひろ)

株式会社リバネス代表取締役CEO。1978年神奈川県横浜市生まれ。

東京大学大学院農学生命科学研究科博士課程修了。博士(農学)。

リバネスを理工系大学院生のみで2002年に設立。日本初の民間企業による先端科学実験教室を開始する。中高生に最先端科学を伝える取組みとしての「出前実験授業」を中心に200以上のプロジェクトを同時進行させる。2011年、店産店消の植物工場で「グッドデザイン賞2011ビジネスソリューション部門」を受賞。

2012年12月に東証マザーズに上場した株式会社ユーグレナの技術顧問や、小学生が創業したケミストリー・クエスト株式会社、孤独を解消するロボットを作る株式会社オリィ研究所、日本初の遺伝子診断ビジネスを行なう株式会社ジーンクエストなど、15社以上のベンチャーの立ち上げに携わるイノベーター。


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