他にも元の英語にくらべて、とてもしかつめらしいものになってしまっている言葉はたくさんあります。
例えば「一般教書演説」。米国大統領が、年頭に議会で行う、その年の重要課題に関する演説ですが、元の英語は「State of the Union Address」です。ここでのStateは「状況」、Unionはもともと米国独立時の13州を意味したのですが、今日では「わが国」というニュアンス。そして「Address」という英語にはたくさんの意味がありますが、ここでは住所ではなく「演説」です(参考記事)。従って、この英語を日本語にすると「わが国の状況に関する演説」ということになります。
どこから一般教書演説などという、米国大統領とローマ法王が一緒に演説するような響きの言葉になったのでしょう。実に不思議です。誰がいつこの日本語を造語したかの詮索(せんさく)は別にして、もとの「国の状況についての演説」というニュアンスに近いものに変えたほうが良さそうです。
ほかにも、最近の例でいえば「最高経営責任者」。これがCEO(Chief Executive Officer)の訳語であるのは、ビジネスパーソンであればご存じのとおり。ですが、どうにもしっくりきません。
ここで使われているチーフ(chief)という英語は、共通目的を持つ結束の強い集団のリーダーを意味します。インディアンの酋長もチーフですし、レストランの従業員チームのリーダーもチーフです。リーダーのことをチーフと呼ぶグループは、その目的達成志向、同質性などにおいて、非常に緊密に結びついているというニュアンスがあります。
CEOという英語のニュアンスには、「最高」などといった封建的なニュアンスはありません。日本語訳も、もっと額に汗して働くという感じを込めて「主任執行役員」くらいに変えたいところです。
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