「アンネの日記」事件と「従軍慰安婦」のビミョーな関係窪田順生の時事日想(3/3 ページ)

» 2014年03月18日 07時40分 公開
[窪田順生,Business Media 誠]
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敵の“失点”

 ご存じのように今、日韓は「従軍慰安婦」をめぐってワーワーやりあっている。『文春』『新潮』は競うように「従軍慰安婦はインチキ」を押していく。無論、韓国も負けていない。フランスの「アングレーム国際漫画祭」で、無知なフランス人相手に、日本軍が韓国の少女をさらってレイプしまくるという漫画を公開している。

 韓国の反日ロビイスト団体は今、米国で従軍慰安婦の象徴である「少女像」をいたるところに建設するという動きをしている。在米日本人のみなさんも反対署名を集めるなどして撤去を求めるような奮闘されている。

 が、そこはもう何年も前から「反日ロビー」をしているだけあってかなり上手だ。2月には、毎度おなじみの韓国系住民だけではなく、タイ人やら親日国の人々まで寄せ集めて「売春婦だから撤去しろというのは人種差別だ」なんて言わせたりしている。

 韓国のロビイストは米国で、「従軍慰安婦」の映画も企画しているらしい。もちろん、これには反日世論を形成するという狙いもあるが、もうひとつ重要な狙いもある。

 それは、挑発にのった日本の愛国主義者に「行動」を起こさせるということだ。

 想像してほしい。もしこのまま従軍慰安婦論争が激しくなり、少女像も続々と全米に広がっていったら。血の気の多い“愛国者”なら、「いつまでもこんなやられっぱなしじゃラチがあかねえ」なんてハンマーをもって少女像を力づくで撤去しようなんて輩も現れるかもしれない。韓国はそのような日本人が出てくるのを心待ちにしている。

 「被害者」を貶める、というのが恥ずべき行為だというのは世界の共通認識だ。さらに言えば、欧米人は「人権侵害」カードを出されると、まともな検証なしに攻撃に転じるという文化を持つ。その時に従軍慰安婦は捏造だ、インチキだと主張したところで、『アンネの日記』を破った男と同じような扱いをされ、日本人の「差別主義者」イメージが確立されてしまう。

 情報戦では、先に頭に血がのぼったほうが必ず負ける。「愛国者」のみなさんにはぜひともそのあたりを肝に銘じていただきたい。

従軍慰安婦論争が激しくなっても、頭の中は冷静に(写真はイメージです)
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