経営者兼新入社員が入社してくる時代だけど、あなたの会社は対応できる?サカタカツミ「就活・転職のフシギ発見!」(2/3 ページ)

» 2014年03月17日 08時40分 公開
[サカタカツミ,Business Media 誠]

卒業後もビジネスを続ける、新入社員 兼 社長の登場!

 「卒業後もビジネスは続けますよ」と、学生であり社長である皆さんはキッパリと答えてくれます。会社は清算しますという人もいますが、そういうケースのほうが比較的レアかもしれません。

 当然、彼らを採用する企業は、彼らが学生時代にすでに起業家だったという事実は知っているでしょう。その部分に注目し、ユニークさを評価して内定を出した人事担当者もいるはずですから、そういった、いわばベンチャーマインド的なものがあるということは、もちろん承知しているはずです。

 しかし例えば、マーケティングの会社に内定が出ていて、さらに自分でもマーケティングの会社を持っている、その2つを両立することで、コンペティターになるという可能性もあるのです。入社後も会社を続けるとすれば、こういうケースが当たり前のように起こることは想定できますよね。

 そういう学生と話をしていると「会社の人事には、引き続き事業は継続するって話をしているので大丈夫です」と、明るく答えてくれます。しかし私としては、会社サイドは、どの程度のリスクを見込んでいるのだろうと、老婆心ながら心配です。

 学生であり社長もしていたという彼らにしてみたら、そもそも「仕事は会社だけでするもの」という意識があまりないのです。これ、ちょっと新しい感覚かもしれません。

個人と組織、仕事とプライベートの線が溶け始めた

 こういった感覚や意識については、その類いの人が書いている、個人のブログなどを読んでいるとよく分かります。以前、このコラムでも「退職ブログ」について言及しましたが(参考記事)、最近は「転職しました、こういう仕事をしていました、引き続きこういう仕事をします」という記述を、たくさん見かけるようになりました。

 “会社人”あるいは“組織人”的感覚で考えると「その実績は、自分だけでやったものじゃないだろう」とか、「そもそも会社の仕事であって、自分のビジネスじゃないだろう」とか「予算もすべて会社持ちで、でも成果は自分が誇るのか」という、怒りにも似た疑問が、たくさん湧いてくるでしょう。

 けれども、自分の仕事と生活、会社の仕事と生活や立場、が、ゆるやかに溶けてきた結果(くわしくは本連載の過去記事をどうぞ)、「会社で仕事をする=自分の仕事=自分の成果=セルフブランディングに使う」という構図が生まれてしまうのです。

 もちろん、彼らの多くは無邪気で悪気なく、そして明るくいろんなことを公表してしまいます(当然、守秘義務は厳守しているはずであると信じていますが)。

 私は、こういう流れを否定しているわけではありません。ユニークな人材を許容する会社には、やはりユニークな人材が集まります。ガチガチに杓子定規なことしかできない組織には、やはりそういうタイプしか集まらないのですから。

 イノベーションを起こしたい、と標榜する企業だとしたら、こういう人たちの「組織外での行動」や「セルフブランディング」だけでなく、もしかしたら「コンペティターになりそうな会社を経営してしまう」ということすら、許す必要が出てくるかもしれません。企業にとっては大変なことですけどね。

(写真はイメージです)

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