今、大きな注目を集めるクラウドファンディング入門クラウドファンディング(2/2 ページ)

» 2014年03月07日 08時00分 公開
[山本純子,Business Media 誠]
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投資会社から出資を断られていたペブル

 ペブル・テクノロジー社は、ベンチャー企業といっても、09年からスマート・ウォッチの開発に着手し、ペブル以前もブラックベリー(※2)対応のスマート・ウォッチ「インパルス(inPulse)」の開発と発売に携わった実績がある企業です。

※2:カナダのリサーチ・イン・モーション社が1997年に開発したスマートフォン。欧米ビジネスマンを中心に広く使われている


 今回彼らがクラウドファンディングを利用した背景には、インパルスの経験があったにもかかわらず、ペブル製品化に対して最終的に投資会社から資金提供を受けられなかったという事情がありました。しかしながら結果としては、今紹介したとおり、彼らは彼ら自身でさえ予測できなかったほどの巨額の資金を手に入れることができたのです。

 反響があまりにも大きかったため、クラウドファンディング・キャンペーン終了後、彼らはキックスターターを通じて資金提供した人へのリワード(特典。ここでは投資に対する“見返り”を意味します)用のペブル製品版8万5000個を製造するだけでも、当初計画していた生産ラインでは間に合わないと判断し、計画をやり直すことを余儀なくされます。とは言え、計画当初の12年9月発売から遅れること4カ月、13年1月23日に無事出荷を開始しました。

 同年7月12日配信の日本版テッククランチ(Tech Crunch)記事によると、その時点で(前述の8万5000個含め)27万5000個の事前注文を受け、米国の最大手家電量販店ベスト・バイでも販売が開始されたと公表されています。(※3)

※3:イサリントン、ダレル「スマートウォッチのPebble、Kickstarterと予約注で27万5000台を販売。アプリは100万ダウンロード達成」、ノブ・タカハシ訳、『TechCrunch Japan』、2013年7月12日


 技術はあるが無名のベンチャー企業が、インターネットで一般の人たちから資金を集めて成功を収める。いわゆる「アメリカン・ドリーム」のようで遠い世界の話に聞こえるかもしれませんが、実は日本でも成功例は生まれています。

(つづく)

著者プロフィール:

山本純子(やまもと・じゅんこ)

株式会社アーツ・マーケティング代表。1997年、慶応義塾大学文学部美学美術史学専攻卒業。

大学在学時よりゲーム業界に携わり、主にオンライン・ゲームのマーケティング、調達、事業開発等に従事。

2009年、慶応義塾大学大学院アート・マネジメント分野修士課程に入学。同年末にITの力で芸術を広めるために(株)アーツ・マーケティングを創業。

2011年、修士課程修了後よりクラウドファンディングの研究を始め、慶応義塾大学SFC研究所上席所員(訪問)を経て、現在、企画・コンサルティング・事業開発、および講演・レクチャー等に取り組む。


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