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クラウド? パッケージ? 青色申告ソフトの選び方消費税8%時代の確定申告(7/8 ページ)

» 2014年03月04日 08時00分 公開
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自分に合った青色申告ソフトはどれ?

 改めて最後に、これまでレビューしてきた、ビズソフトの「ツカエル青色申告+確定申告14」、弥生の「やよいの青色申告14」、クラウド型青色申告ソフト「freee」「マネーフォワード確定申告」の4製品を比較してみたい。

 全体的な印象では、ツカエル青色申告+確定申告14と、やよいの青色申告14は、使い勝手や考え方が似ている。どちらを購入しても確定申告ができるので、細かなところの差で判断するしかない。

 マネーフォワード 確定申告は、クラウド型でありながら従来のパッケージソフトと似ている部分が多く、パッケージソフトを使用していた人が乗り換える際も違和感が少ないだろう。

 freeeは、インタフェースも考え方も斬新で、筆者は違和感を抱いたが、初めての人には馴染みやすいのかもしれない。それほどユニークな存在なので、freeeで確定申告を始めた人が、将来、パッケージソフトに乗り換えるのはハードルが高くなりそうだ。

 クラウド型青色申告ソフトは、現段階(2014年2月)での完成度は低い。だが、改善するスピードに期待ができるので、3カ月後、半年後、来年の確定申告の時期にはすべてがクリアになっているかもしれない。

自動取り込み、自動仕訳

 クラウド型青色申告ソフトの登場で俄然注目を浴びたのが、口座データの自動取り込みだ。筆者のように法人(個人事業主)口座がダメ、Suicaがダメ……と相性が悪い人にとっては、クラウドへの移行メリットがない。

 クラウド化のメリットがあるのは、口座入金の数が多い人だろう。毎月数十件、数百件の入金がある人はクラウド化によって得られるメリットは絶大だ。そうでなくても自動化で楽をしたいと考えるなら、これから独立する人は銀行口座の選び方やクレジットカードの運用方法をよく考えて独立の準備をしてほしい。

 ただし、全自動といううたい文句は現実とはかけ離れている。現状は半自動、あるいは一部自動といった感じなので過剰な期待はしないほうがいい。

初期設定

 青色申告ソフトを初めて使う人に訪れる最初のハードルは、「何から始めたらいいの」という点だと思う。この点に関しては、やよいの青色申告14が最も初心者向きだろう。作業量は多いがウィザード形式の質問に答えることで売掛金の下に得意先を補助科目として登録するなど、簿記の知識がない人でも初期設定ができる仕組みが用意されている。

 とはいえ、やよいの青色申告14が完璧かというとそうでもない。筆者も簿記の知識は皆無だが、税金関係の本を数冊読んでから初めての確定申告に臨んだ。簿記○級を取る必要はないが、ある程度の知識がないと都度ハードルが訪れるので、確定申告のアウトラインを知る程度の学習はしておいたほうが結局は楽に確定申告を終えられるだろう。

手入力

 クラウド型青色申告ソフトは、環境が整えば半自動、そうでないと一部自動となるが、手入力は避けられないのが現状だ。「○○の費用はどうやって記帳しよう」となったときに、楽に記帳できるのはツカエル青色申告+確定申告14だ。ツカエル青色申告+確定申告14のかんたん取引帳は、選択肢が豊富なので仕訳に迷ったときにアシストしてくれるだろう。

 次点で、やよいの青色申告14。簡単取引入力はやや選択肢が少ないが、仕訳アドバイザーと組み合わせて使用すれば相当な助けが得られるだろう。クラウド型は手入力に関しては少々物足りない印象だ。クラウド型青色申告ソフトは全体的にヘルプ、チュートリアルといった部分の充実度が低い。

ツカエル青色申告 ツカエル青色申告+確定申告14のかんたん取引帳

売り上げ・回収の記帳

 売り上げが自動化できれば、クラウド型青色申告ソフトのメリットは最大値となる。ただし、件数が少なければ、パッケージソフトでもそれほどの労力ではない。

 問題は回収の記帳だ。個人事業主の場合、源泉徴収されて振り込まれる場合がある。得意先によっては振込手数料を引かれることもある。この処理が楽にできるかもチェックしたいポイントだ。

 入金の処理がもっとも簡単にできるのは、ツカエル青色申告+確定申告14だ。選択肢から「報酬などの掛代金が源泉徴収所得税と振込手数料を差し引かれて普通口座に振り込まれた」を選べば、後は金額を入れるだけで複雑な記帳ができる

ツカエル青色申告 ツカエル青色申告+確定申告14で売り上げから源泉徴収と振込手数料がひかれた場合の記帳

 次に楽なのは、やよいの青色申告14。クラウド型青色申告ソフトは正直なところ、回収の記帳でのハードルが高い。使い始める前に超えられるハードルなのかを確認したい。

固定資産・減価償却

 固定資産の登録、減価償却に関しては、4製品とも難しくはないだろう。マネーフォワード 確定申告の一括償却に怪しい点があったが、近いうちに改善されるはずだ。

家事按分

 家事按分も操作はどれも容易だ。家事按分に関しては、青色申告ソフトを使う前に、その概念をユーザーが理解することが必要だ。パッケージソフトであれば入力を始める前に補助科目を作成して記帳を開始する。クラウド型であれば按分できるように運用方法を考える必要がある。例えば、家族の携帯電話がまとめてクレジット請求されていると自動取り込みの意味がなく、按分する以前の問題となる。

決算処理

 決算処理が最も簡単にできるのは、やよいの青色申告14だ。数年前にこの部分は大改修され、必要とする流れが把握しやすく、ビジュアル的にも分かりやすい仕様となった。

 ツカエル青色申告+確定申告14は、やや分かりやすさは劣るが、やよいの青色申告14と同様な安心感はある。パッケージソフトは各種控除の入力も簡単にできるし、生命保険料控除、配偶者控除、扶養控除も金額や年齢を入れれば自動計算してくれる。地代家賃などで整合性が取れない場合はアラートで知らせてくれる。生命保険料控除や配偶者特別控除などの計算方法をしらなくても正しい控除額を算出してくれるので安心感は高い。

やよいの青色申告14 やよいの青色申告14は、流れも分かりやすく、個々の操作性も高い

 クラウド型青色申告ソフトは、「完成度が低すぎて恐い」というのが正直な印象だ。間違った計算でもそのままスルーで出力されてしまう。内容によっては、税務署の人が3秒で間違いに気付きそうなレベルだ。少なくとも2014年の確定申告をクラウド型青色申告ソフトを使って申告する人は、控除などの金額を自分でよく調べて、納税額に間違いがないように気をつけたい。

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